屋根・瓦
寺院の本堂には主として入母屋造りと寄棟造りがある。当地は台風の通過が多く、また強風の地でもあるため、風の抵抗の少ない、雨風に強い、寄棟造りの寺院が多い。この先人の知恵を尊重し、また前本堂のありようを引き継ぐ意味もあり、新本堂でも本葺き瓦の寄棟造りを採用した。そして、寄棟の大棟の両端には、古代寺院に使用されていた鴟尾が、古代瓦、鴟尾の研究の第一人者である皇學館大学元教授稲垣晋也先生のご指導の下に、設置された。
耐震・断熱
屋根の重量を減らし、耐震性を向上させるため、本葺きの瓦葺きには、土を使わず、木製の桟を組み、瓦を一枚一枚、ステンレスの釘で固定した。
境内地は海岸に近く、地質は砂で、耐震性に不安があった。そのため耐震性を増加させるために、二重のコンクリートで出来た大きな台船に新本堂を乗せるような方法を採用した。そして、台船の基礎を大半土に埋めた。
さらに、すべての壁に7.5cm角の角材で約30cm間隔で格子を組み耐震壁とした。
その格子の間に断熱材のグラスウールを入れ、断熱効果を高めた。
前本堂の部材・壁画の再使用
前本堂には欅の丸柱、美しく彩色された組み物など、後世に引き継ぐに十分価値の高いものが使われていた。そこで前本堂を記念するものを残す意味も含めて、これらを出来るだけ新本堂でも再使用することにした。丸柱は、8本良いところを選り、継ぎ、再使用した。
また、彩色が施された組み物や梁のおおむねすべてを再使用した。前本堂の彩色部を取り外すための調査と作業が進む中で、彩色の下層にさらに高度な彩色が施されていることが判明したため、この新築再建工事に際して、古彩色を一部復元して再使用した。
前本堂では、本尊の後ろの来迎壁に元禄九年(1696)に寄進された二十五菩薩の壁画が描かれていた。この壁画は長年の時間経過により相当痛みが進んでいた。そこでこの機会に修復し新本堂でも再使用することにした。また、この来迎壁の裏面には、当山第二十九世堯禅上人によって復元された釈迦三尊図も修復し、再使用した。(これらの壁画は美術、西方寺バーチャル美術館に掲載中)
新本堂・大玄関棟建坪
施設名 | 坪数 | 備 考 |
本堂 | 64.5 | |
後堂 | 7.5 | 本堂に付設 |
収納庫 | 3.3 | 本堂に付設 |
大玄関棟 | 15 |
工 事 経 過 表
年 | 月 | 日 | 事 項 | 年 | 月 | 日 | 事 項 |
13 | 4 | 20 | 小島建設と工事契約 | 15 | 1 | 8 | 新本堂立柱式 建方開始 |
14 | 2 | 中旬 | 用材刻み開始 | 15 | 3 | 9 | 上棟式 |
8 | 31 | 前本堂滅燈会、本尊等遷座 | 15 | 9 | 末 | 新本堂大工工事完了 | |
9 | 20 | 前本堂解体終了 | 15 | 10 | 初旬 | 新大玄関棟工事開始 | |
10 | 8 | 地鎮祭 | 16 | 2 | 28 | 本堂・大玄関棟引渡し | |
10 | 24 | 基礎工事開始 | 16 | 3 | 6 | 落慶法要 |
新築工事の設計・施工は、社寺建設一筋の桑名市の小島建設。
いぶし瓦は、岐阜県可児郡御嵩町 伏見窯業
瓦葺きは、京都市嵯峨野天竜寺車道町 甍技塾 徳舛瓦店 (日本建築の瓦葺きに関する詳細な情報が掲載されています。ご興味のある方は是非ご覧下さい。)
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工事に伴う仏教行事の解説