旅はキャンピングカーに乗って 東北紀行 1
 予約の宿はなく日程は思いのまま。あるときは原野の真ん中で あるときは断崖の上で 風雨の中であったり 満天の星空を見ながらであったり 出会った仲間と話し合いながら自然を楽しむ。夫と二人で気儘なキャンピングカーに乗っての旅は至福のときだ。
 これは2002年10月の三週間にわたるキャンピングカーに乗っての東北紀行です。

旅はキャンピングカーに乗って
東北を巡る旅 1
                                                    
 720kmを走ってようやく磐梯山の麓に着く。そこから東北を巡る旅は始まった。
 みちのくは遥かに遠くそして広い。10月2日から19日までの18日間 総走行距離3800kmに及ぶ旅であった。
 
 
 

旅の途中でたくさんの山に登った。
 磐梯山 西吾妻山 月山 秋田駒が岳女目岳 八甲田山赤倉岳・井戸岳 八幡平 栗駒山 蔵王熊野岳 安達太良山
 秘湯と呼ばれる温泉をはじめとする東北らしい素晴らしい温泉もいくつか楽しんだ。
 乳頭温泉鶴の湯 酸ケ湯 ふけの湯 鳴子温泉ゆさや 新野地温泉相模屋 など
 すっかり秘湯の魅力にとりつかれた感じだ。
 また奥の細道をたどり、松尾芭蕉ゆかりの土地を訪れ 句碑 芭蕉像にもたくさん出会えた。
 羽黒三山 龍飛岬 本州最北端大間崎 恐山 三内丸山遺跡 白神山地 小岩井農場にも行ったし最上川芭蕉ラインの舟下り 田沢湖遊覧もした。
 さらに酒田 象潟 角館 花巻 遠野の町も歩いた。 

第1日 いざ みちのくへ
 松阪から720kmひたすら走りようやく裏磐梯に着く。
 道の駅 裏磐梯P泊 近くの温泉施設ラビスパへ行くが水曜日で休館 残念!
 
第2日 磐梯山登山
 八方台から磐梯山に登る。美しいブナ林を過ぎ頂上が近づくにつれて紅葉がまっ盛り。ナナカマドの赤が強烈だ。まさに「東北の紅葉」を堪能する。頂上は360度の展望。帰りは旧中ノ湯小屋の温泉に足を浸し疲れをいやした。
 福島と山形の県境白布峠を越え最上川源流標を見て白布温泉に降りる。
 西吾妻岳ロープウェイ駅駐車場P泊 林業体験交流センターで入浴。このあたり一帯にいる白猿の話を聞いた。
 
 
 
第3日 西吾妻山
 風が少し強い。ロープウェイと3基のリフトを乗り継ぎ北望台へ。ここからの木道は快適なトレッキング気分。しかし水場から梵天岩までの登りは岩がゴツゴツした急勾配で少しきつい。深田久弥は「人形石の峰の上に立つと、当の西吾妻山は気の遠くなるほど遥か向うにある」と書いている。山頂は樹木の中の狭いところで展望がきかなかった。下山途中の山の斜面は黄と紅のコントラストの美しい紅葉であった。ここは最上川源流の山、この道をたどって舟遊びをし、河口の酒田へ下ることにした。
 道の駅 にしかわP泊 公共温泉水沢温泉館で入浴
 
第4日 月山登山 湯殿山
 「羽黒山、月山、湯殿と合せ三山とす。・・・めで度御山と謂つべし」(おくのほそ道)
 月山に登る。芭蕉はこの山に元禄2年6月8日に登りその様子を「雲霧山気の中に、氷雪を踏みてのぼる事八里・・・息絶身こごえて頂上に臻れば日没て月顕る」と書いた。私たちが登ったこの日も早朝は晴れ間があったものの次第に悪化し霧が濃くなった。相前後して登っていく人が若い同行者たちに語っている次年子の話を聞きながら黙々と登った。山頂が近づくにつれて風も強くなったが一瞬の雲間から月山の美しい斜面を見ることができた。
雲の峰幾つ崩れて月の山 芭蕉
句碑を見てから湯殿山へ向かった。
 湯殿山神社ではその朱塗りの鳥居の大きさに仰天した。
語られぬ湯殿にぬらす袂かな 芭蕉
芭蕉は語ることのできない湯殿山の神秘な有難さに涙を流したが、私はご神体の不思議さに「湯殿山神社へ来てよかった」と感じた。句碑は神社から月山への登山口にあった。
 夜は羽黒国民休暇村オートキャンプ場へ車を入れた。休暇村で入浴。はじめてのオートキャンプ場泊であったが、その快適さを痛感した。 
第5日 羽黒山 最上川芭蕉ライン舟下り
 早朝 羽黒山へ。修理中の国宝五重塔を左に見て2446段の石段を登る。途中 特別天然記念物杉並木のなかの石段を踏破し霊山羽黒山を参拝したありがたい認定証をいただいた。芭蕉塚の近くから別院のあった南谷に入った。訪れる人も少ないこの地に
有難や雪をかほらす南谷 芭蕉」の句碑がひっそりと立っていた。
 辿りついた朱塗りの鳥居、雪国らしい重厚な造りの神殿に出羽の人々の三山信仰の深さを感じた。芭蕉像と「阿闇梨の需に依て、三山順礼の句々短冊に書」の三句碑があった。羽黒山については
涼さやほの三か月の羽黒山」であった。
 ここから芭蕉ラインで舟下りを楽しみ、西吾妻山を源流とした最上川河口酒田へと車を走らせた。
 庄内夕日の丘AC付オートキャンプ場で泊。使用料は高いが水と電気をふんだんに使い、コインランドリーのあるありがたさをしみじみと感じた。夜間は雨。夫と出羽三山について語り合った。
  
第6日 酒田から鳥海山象潟
 北前船航路の重要港として栄えた酒田には三十六人衆と呼ばれる豪商がいた。その中の本間家旧本邸・美術館と今も使われている山居倉庫を見学した。そして鳥海山へ登ってから象潟の干満珠寺(蚶満寺)へ行くことにした。途中
あつみ山や吹浦かけて夕すゞみ」の芭蕉句碑を見て、鳥海ブルーラインに入ったが「雨朦朧として鳥海の山かくる」(おくのほそ道)で5合目鉾立駐車場まで行って登山を断念。
 秋田・山形県境線をまたいで象潟へと下り、蚶満寺に詣でる。芭蕉がこの寺へ来たのは1689年。当時 象潟は無数の小島が浮かび松島と並び称せられた景勝の入り江で、芭蕉は「朝日花やかにさし出づる程に、象潟に舟をうかぶ。・・・地勢魂をなやますに似たり。象潟や雨に西施がねぶの花」であったが、115年後の地震で陸地となった。残念ながら「方丈に座して簾を捲けば・・」というわけにはいかなかった。ここにも芭蕉像と句碑があった。
 夜は道の駅なかせんでP泊。近くの小さな八乙女温泉に浸りながら土地の人と話をした。
 
第7日 角館
 みちのくの小京都と呼ばれる角館は藩政時代の面影を色濃く残した町。角館の桜が見たいと長年憧れていた。今は花の時期ではないが、武家屋敷通りは黒板塀が続き、各屋敷に植えられた樹木や枝垂れ桜が古都の風情に花を添え誠に美しい。
 次に田沢湖に行く。水深423m、日本一の深さを誇るカルデラ湖だ。観光遊覧船に乗り、田沢湖のシンボル金色に輝く辰子像を見る。
 この日は、今回の旅ではじめての宿をとる。乳頭温泉の秘湯 鶴の湯だ。自然の中のランプの宿の湯治風景は、時代の歯車がとまっているのかと思うほどで、すっかり東北の湯治湯の魅力にとりつかれ、はまってしまった。はじめて混浴に入り、楽しさいっぱい 胸ドキドキであった。
 

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