かめさんの詩集
第ニ弾
1
生まれてきてすみません。
―と名のある作家が言いました
その前すでに ぼくらの
イノチは取引されていた
言いようもなく惨い
戦いが続いた
数知れない
命が奪われた
遺伝子治療が始まり
ヒト・ゲノムがどんどん解読されていく
それでも ぼくらの
来世は差押えられたまんまです
クローン羊
が子を生んで
独りぼっちの 僕は
みんなの 宇宙
を身籠った
2
履き古して
ボロボロになった靴
を引摺って
トボトボと
爪先の向いている方に
歩いてくると
明日に出会う
明日に出会ったら
上衣の破れたポケットの中に
大切に仕舞ってある宝物
〜蝉の脱殻
を見せてあげよう
孤独は
滴るように重い
ときには
羽毛より高く
空に舞う
風のうへにありかさだめぬ
塵の身は 行くへもしらず
なりぬべらなり
よみ人知らず