「つながらない権利」って? 勤務時間外のメール対応を考えよう

◆「つながらない権利」とは

「つながらない権利」をご存知でしょうか。労働者が、勤務時間外や休暇中に、仕事上のメール等への対応を拒否できる権利のことです。アメリカ・ニューヨーク市で現在、「勤務時間外のメール等への返信を労働者に強いることを禁じる」条例案が審議されています(日本経済新聞1029日夕刊)。

◆先行する各国、各社の例

つながらない権利の法制化で先行したのがフランスです。2017年、従業員50人以上の企業を対象に、時間外のメールの扱いを労使で協議するよう義務づけました。またイタリアでも、2017年に成立したいわゆるスマートワーカー(働く時間・場所を特定しない労働者)を保護する法律において、つながらない権利を雇用契約に明記するよう義務づけています。

また、企業の独自の施策として、ジョンソン・エンド・ジョンソン(午後10時以降のメール禁止)や、ダイムラー(長期休暇中の社内メールを受信拒否・自動削除)の例が知られています。日本企業でも、三菱ふそうトラック・バス(ダイムラーの子会社)が、同様の措置をとっています。

◆「つながらない権利」で労使トラブル予防

日本では現状、法令などで「つながらない権利」が定義されているわけではありません。

とはいえ、使用者側が、明確な社内ルールや指示に基づき「つながる」ことを求めた場合や、過剰に「つながっている」状態を把握しながらも黙認していた場合などは、労働から離れることが保障されていない待機等の時間(いわゆる手待時間)として、労働時間とみなされるおそれがあります。後々、時間外労働分の割増賃金を請求されるリスクや、労災発生時に認定基準における労働時間としてカウントされるリスク等々がありますので、ある程度「つながらない権利」を意識することは、労使トラブル予防の観点から有効です。

◆4割以上の労働者が、勤務時間外も「つながっている」

実態として、勤務時間外や休暇中にメール・電話・LINE等で「つながる」ことは珍しくありません。調査によれば、43.9%の労働者が、「勤務時間外に電話・メール等で仕事関係の連絡をとる」ことが「よくある」「ときどきある」とのことです(労働政策研究・研修機構「裁量労働制等の労働時間制度に関する時間調査」(厚労省抽出分))。

現代は、テレワークをはじめとする多様な働き方の浸透や、ICT技術の普及により、昔より「つながる」機会が増えている時代といえます。「つながる」ことが良い結果を生む場合もあるでしょう。自社の実態を踏まえた「つながり方」を模索するべきではないでしょうか。

 

 

 

定年延長の導入状況と課題

◆定年延長の状況

(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構が「定年延長」に関して行った調査(定年延長実施企業調査)の結果等をまとめた資料が公表されており、定年延長への企業の対応状況がわかる内容となっていますのでご紹介します。

現時点では、60歳定年(+継続雇用)とする企業が7割以上となっていますが、65歳以上を定年とする企業も着実に増え、25,000社(2017年時点)を超えています。

定年延長をする場合、定年年齢を「65歳」とする企業が80%を超えています。また、95%の企業が全社員を対象にしていますが、特に人手不足な職種(運転手、薬剤師、介護職、清掃・警備色等)に対象を限定する企業も一部あります。

なお、定年延長に伴って「役職定年」を導入した企業は13%で、規模が大きいほど導入していますが、それでも20%程度です(30人以下:9.3%、301人以上:21.2%)。

◆仕事内容と賃金水準

引き上げられた定年年齢までの仕事内容は、それ以前と同じである企業が9割以上となっています(59歳以前とまったく同じ:53.8%、まったく同じではないが大体同じ:42.5%)。特に運輸業では、99.1%が同じ(まったく同じ・だいたい同じの計)となっています。仕事の中身が同じだとすると、賃金をどうしているのかも気になるところです。

定年延長にあたって社員全体の人事・賃金制度の見直しを行った企業は30.2%、行わなかった企業は67.1%でした。賃金についても、「59歳時点と変わらない」が61.5%でした。

一方、59歳時点の水準と異なる場合の決定のしかたでは、多いほうから順に「個別に決めている」「等級やランクなどで異なる」「全員一律で同じ水準」となっています。59歳時点の賃金水準を10割として65歳時点の賃金水準をみると、「10割以上」が58.3%を占めており、「9割」の8.5%と「8割」の10.4%も合計すると77.2%の企業で8割以上としていることがわかります。 

◆定年延長の提案は経営層から

大半の企業で、定年延長に向けて検討を開始してから実際に定年を引き上げるまでの期間は、半年から1年程度です。また、定年延長の提案は圧倒的(77.5%)に社長などの経営陣によるものです。

◆社員の納得を得るには

社員の満足度が9割を超える定年延長。導入にあたっては、高齢社員の賃金、組織の若返り、健康管理、モチベーションが大きな課題になってきますが、賃金など社員をみて個別に対応するのでなく、きちんとしたルールを策定し、それに基づいて行うことが社員の納得感を生むことにつながるでしょう。

【(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構「定年延長、本当のところ」】

https://www.jeed.or.jp/elderly/topics/2018/q2k4vk000001sibn-att/q2k4vk000001sigk.pdf

 

留学生の日本企業への就職事情(平成29年度法務省発表資料より)

  外国人労働者の市場6

現在、日本国内で働く外国人は128万人にのぼり、労働力の50人に一人が外国人であるといわれています。今回は、在留資格のひとつ「留学生」について、平成29年度における留学生の日本企業への就職事情が法務省の入管局より発表されましたのでまとめます。

◆留学生の日本企業への就職実態

「留学」等の在留資格から、日本国内企業への就職を目的とした在留資格の変更は、22,419人が許可されています(前年比15.4%増)。変更後の資格は「技術・人文知識・国際業務」が全体の91.4%を占めています。

 主な国籍・地域としては、約半数が中国で10,326人(46.1%)、次いでベトナム、ネパール、韓国、台湾となっており、アジア諸国だけで全体の95.5%を占めています。

 就職先の業種としては、非製造業が81.1%、製造業が19%となっています。非製造業では、商業・貿易(9.5%)およびコンピュータ関連サービス(7.7)が上位を占めており、製造業では一般機械および電気(共に3.1%)が上位を占めています。

 職務の内容としては、翻訳・通訳が最も多く23.8%で、販売・営業(14.1%)、海外業務(9.5%)、技術開発・情報処理(6.3%)と続きます。

 月額報酬については、2025万円未満が47.3%と最も多く、次いで20万円未満(34.6%)、2530万円未満(10.3%)の順となっています。

 就職先の企業等の資本金については、最も多いのが資本金500万円超1,000万円以下の企業等で4,282人(19.1%)、そして500万以下の企業への就職が4,077人(18.2%)で、全体の半数以上が1億円以下の企業へ就職しています。

 就職先の企業等の従業員数については、従業員数50人未満の企業等に就職した者が8,275人(36.9%)と最も多く、これを含め100人未満の企業等への就職数が10,356人と全体の約半数を占めています。

 留学生の最終学歴については、大学卒業者が10,196人(45.5%)と半数近く、次いで大学院卒業者が5,477人(24.4%)の順となっており、両者で全体の約70%を占めています。他に多かったのは、専修学校卒業者で4,869人(21.7%)となっています。

 就職先企業等の所在地については、東京都9,915人(44.2%)と圧倒的に多く、大阪府2,228人(9.9%)、神奈川県1,278人(5.7%)と続きます。

◆総 論

留学生が日本企業等へ就職する割合は年々増加し、5年前と比較すると約2倍以上に増えています。そして、出入国管理法の改正により、来年4月から新しい在留資格が生まれ、今後ますます外国人の雇用市場は活発になることが予想されます。外国人労働者の受け入れを検討している企業は、制度改正の動向に注目することはもちろん、受け入れ後の管理体制の準備にも注意が必要です。

 

 

                                                                                                                                     

                  

 

東海コンサルティンググループ  東海労務経営管理協会/東海建設業福祉労務協会

パワハラ防止対策、厚生労働省は法制化を検討

◆労使の主張は依然平行線だが…

11月6日の第10回労働政策審議会雇用環境・均等分科会で、職場のパワハラ防止対策について、厚生労働省は3つの案を示しました。

案のうち、(1)パワハラ行為を禁止して加害者への損害賠償請求をできるようにする、(2)事業主にパワハラ防止措置を義務づける、の2つは法制化に関するもので、もう1つが指針の策定(法的強制力を持たせる案とそうでない案の2案)です。労働者側と使用者側で意見が対立していますが、公益委員からは社会的情勢を考えると法制化は当然との意見も出ています。

これらは年内にまとめる報告書に盛り込まれ、来年中に関連法案を国会に提出する方針とされています。

◆事業主にはどんな防止措置が求められるのか

6日の分科会では、今年3月30日公表の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」より抜粋して、(1)事業主の方針等の明確化、周知・啓発、(2)相談等に適切に対応するために必要な体制の整備、(3)事後の迅速・適切な対応、(4) (1)(3)の対応と併せて行う対応としてプライバシー保護や相談・協力者の不利益取扱い禁止、という4つが示されました。

◆労災認定件数にみるパワハラ問題

2017年度の精神障害に関する労災補償状況をまとめた資料によれば、請求件数は1,732件で前年度比146件増、支給決定件数は506件で前年度比8件増です。このうち、出来事別の決定件数は「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が186件、うち88件が支給決定され最も多くなっています。対人関係では、「上司とのトラブルがあった」も320件と決定件数が多く(支給決定は22件)なっています。

6日の分科会での公益委員の意見も、こうした資料を踏まえたものと考えられます。

◆相談体制の強化も図られている

厚生労働省の「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、相談、助言・指導の申出、あっせん申請に係る件数のすべてで「いじめ・嫌がらせ」が72,067件で最も多く、同省は2019年度より都道府県労働局の相談員を増やし、夜間や休日も対応する相談窓口を設けて相談体制を強化するとしています。

企業においては、行政がパワハラ問題防止に力を入れていることだけでなく、採用や定着に影響することも踏まえ、対策を検討する必要があると言えるでしょう。

 

事 務 所 た よ り

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12月の税務と労務の手続[提出先・納付先]

10

  源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]

  雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>

[公共職業安定所]

  労働保険一括有期事業開始届の提出<前月以降に一括有期事業を開始している場合>

[労働基準監督署]

  特例による住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]

31

  健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]

  健康保険印紙受払等報告書の提出[年金事務所]

  労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]

  外国人雇用状況の届出(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>[公共職業安定所]

  固定資産税・都市計画税の納付<第3期>[郵便局または銀行]

※都・市町村によっては異なる月の場合がある。

本年最後の給料の支払を受ける日の前日まで

  年末調整による源泉徴収所得税の不足額徴収繰延承認申請書の提出

[給与の支払者(所轄税務署)]

  給与所得者の保険料控除申告書、給与所得者の配偶者控除等申告書、

住宅借入金等特別控除申告書の提出[給与の支払者(所轄税務署)]

 

来年4月から労働条件の通知がFAXやメールでも可能になります!

◆労働条件通知書がペーパレス化に!

厚生労働省は、現在、労働基準法第15条で定められている労働条件の「書面」での通知について、来年の4月1日からFAXや電子メール等でも可能にし、規制を緩和させることを決めました。書面として印刷できれば問題ないと判断したことによるもので、企業にとっては印刷や郵送にかかるコストや手間の削減ともなり、利便性が高まることが期待されます。

◆労基法施行規則を改正

具体的には、今年の9月7日に公布された働き方改革法関連法に基づく省令で、労働基準法施行規則第5条第4項に下記の下線部分が追加されました(2019年4月1日施行)。

【労働基準法施行規則第5条】

第4項 法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる

① ファクシミリを利用してする送信の方法

② 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信の送信の方法 (当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)

◆本人の希望が条件

今回の規制緩和は、労働者がFAXや電子メール等での通知を希望することが条件となっています。本人に通知方法を確認し、FAXや電子メール等での受取りを希望しない場合は、今までどおり書面で通知しなければなりません。

また、電子メールで送信する場合の具体的なファイル形式(メールの本文または一定形式の添付ファイルに限られるのか、どちらでもよいのか等)や、本人が確実に受け取ったかどうかの確認の要否などについては、現時点では明らかになっていません。施行までになんらかの基準が示される可能性もありますので、注意が必要です。


中業企業の人手不足対策と課題

人手不足が言われて久しいですが、企業にとっては、採用難や売上減少など、企業経営に及ぼす影響は決して小さくないと思われます。そのような中で、企業はどのような人手不足対策を行っているのか、「中小企業の人手不足に対する意識調査(2018年7月)」(商工中金)の結果からみてみます。

※商工中金取引先中小企業10,150社を対象に実施、有効回答数は4,764社。

◆他社はどのような人手不足対策を行っているのか?

人手不足対応として行っている対策としては、「従業員の能力向上」が46%と最多で、次いで、「職場環境の改善」(35.1%)、「賃上げ等の雇用条件の改善」(31.8%)、「高齢者の採用拡大」(29.7%)、「外注(アウトソーシング)の拡大」(27.5%)、「業務プロセスの効率化」(27.2%)、「定着率向上」(25%)、「機械設備導入による省力・省人化」(22.9%)、「従業員の兼任化」(18.4%)、「女性の採用拡大」(17.8%)、「定年延長・廃止」(13.7%)、「外国人の採用拡大」(11.8%)、「パート・非正規の正社員化」(10.1%)といった対策を行っています。

特に、業種別でみると、製造業で「機械設備導入による省力・省人化」(42.1%、非製造業では13.2%)や「外国人の採用拡大」(21.2%、非製造業では7.0%)が目立っています。

その他にも、「ITIoTの活用による省力、省人化」や「販売単価の引上げ」、「過剰品質・過剰サービスの見直し」、「他社との提携(経営資源の共有等)」、「残業増加」、「業務の縮小・廃止」、「納期の変更」、「海外拠点の新設・拡大」、「他社の買収」といった対策を行っている企業もあります。

◆対策実施上の課題は?

人手不足対策を実施するうえでの課題としては、「対策を行える人材が不在」(25.2%)、「労働法規や規制」(22.5%)、「資金が不足」(12.5%)、「取引先との交渉が難航」(6.7%)、「対策の仕方が分からない」(5.1%)、「従業員との交渉が不調」(1.7%)、「相談相手がいない」(1.4%)などがあります。

業種別でみると、金属製品製造業では、「扶養や社会保険制度でのパートタイマーの年収制限があり、特に時給の高い人は長時間働けない」(勤続製品製造業)、「外国人研修制度を取り入れ、数年前より一定人員を確保しているが期間が短期のため大幅増員が難しい」(窯業・土石業)といった声が上がっています。