| 5.匠の湯と食体験舘 |
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最後に残された目玉は何か。「匠の湯」と「食体験舘(和と洋)」の二つである。 「匠の湯」は薬草風呂、薬石風呂のほか、屋上の露天風呂からは園内の三つの溜池と市内の絶景を眺望できるという。その上、今度は温泉風呂という新企画までだしてきた。温泉はどこからか運んでくるのだろう。 この風呂に年85,000人の浴客を引き込むというので、市内の風呂屋さんたちは大変心配をしている。心配通り85,000人もお客を取られたら、今や僅9軒(かつて30軒)にまで激減している市内のお風呂屋さんが、致命的打撃を受けるのは間違いないだろう。逆に、志摩・鳥羽のホテル・民宿に泊まる観光客なら、この風呂に入るはずはない。どちらにしても困ったことになる。 「食体験舘(和と洋)」はどうか。牛丼、伊勢うどんから、牛なべ、ビーフステーキまで食べさせるというのに、「食体験舘」とは何と殺風景なネーミングなことか。 しかし食べ物屋は名前や値段より、なんといっても味が一番。幾ら安くても不味ければ客は、二度と来てくれない。計画では年12万人の食客を見込んでいるが、一品単価1000円から1,800円という。お美味しい料理を、期待したい。 以上まあ、駆け足でこの事業の各施設を見渡してきたが、これなら絶対お客が来ること間違いないと、 自信を持てた人がどれだけ居るだろうか。 私にはとてもそんな自信はない。これではやってみるまでもなく, 失敗は目に見えている。辛らつな見方だといわれるかもしれないけれど、民間人ならとてもこんな計画に70億円も投ずるとは思えない。責任はあくまでオーナー自身が負っているからである。それでも失敗する。 この計画の場合、先ず敷地が狭い、投下資本も少なすぎる。第一,絶対的条件である魅力が決定的に不足している。だからといって、大規模な構想を立てれば魅力はつくれても、今度はそれに見合う集客が大変だ。資本も運営費も高額になるから、ひとつ狂えば運営収支はたちまち大赤字になってしまう。 先日倒産した宮崎のシーガイヤーの例は典型的的だが、プロの専門家が必死で取り組んでいる二見の戦国村も、磯部のスペイン村も、長島温泉も内容はなかなか厳しいという。 しかもこの厳しさが、一時的なものではないところが大問題なのである。 1994(平成6)年、伊勢志摩国立公園の観光客数は1954万人、ピークに達していた。世界祝祭博が伊勢市で開催され、スペイン村がオープンした年である。だが翌年1月の阪神大震災で打撃を受け、以来客数は下降の一途、1999(平成11)年は1081万人にまで激減し(3月27日朝日新聞)、ピーク時、375万人あったスペイン村の入場者数も、いまや半減している。 加えて、この3月末から、テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)が大阪市で開業した。度肝を抜く仕掛け満点のアメリカ本場の映画村らしい。本場ハリウッドの興奮と冒険と笑いの提供で見る人の心と財布をつかむ算段だ。関西の客を伊勢志摩へ引っ張るどころか、地元の客の大阪への流出を心配しなければならない状況である。 この農・匠計画、どこかのコンサルタントに高い設計料ばかり取られて、思いつき羅列のきわもの計画を買わされたのではないのだろうか。
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