西方寺境内の自然・花を紹介します。
1、ヒイラギ 2、シデコブシ 3、枝垂れ桜 4、萩 5、サルスベリ 6、椿 7、牡丹
1、ヒイラギ(モクセイ科)、柊(ひいらぎ)
駐車場のすぐ上に古木のヒイラギ(柊)が数本植わっている。その最大のものは幹直径60〜70cm、高さ約7mに達している。
ヒイラギの葉は、数対の三角の歯があって先が刺(とげ)になっているが、このような古木になると歯はほとんどなく、丸い葉となっている。
歳を重ねて、枝をひろげ、樹高を伸して、葉まで円やかになったヒイラギを眺めていると、昔あちこちの村で見かけた、長老の姿を思い出す。長老は、長年にわたって身に付けた、豊かな経験と知恵で、地域の人々から尊敬と信頼を得ており、多少の健康上の問題や地域のもめごとは、この長老の一言ですべて解決した。
私達もこのヒイラギのように、歳を重ね、穏やかで円やかになりたいものである。
最近は、世の中の流れが早く、急速な科学技術の進歩に流されて、長老、古老、家長の存在感が薄れつつあり、残念である。
なお、植物学者は、ヒイラギが若く樹丈が低い時は、草食動物たちに食べられぬよう身を守って鋭い刺をもつが、樹丈が高くなり、動物に届かなくなるとその必要がなくなり、歯が少なくなり、ついには全くないものもある、と述べている。
ヒイラギの植わっている辺り一帯は、柊の字(木偏に冬と書く)に相応しい初冬の頃(12月初旬)、高貴な香りに包まれる。
それは、開花に伴う香りである。花は小米のようで、木全体にびっしりと付くが、小さく白く目立たないためほとんど気付かれない。しかし、特に夕方から夜にかけて、えも言われぬ芳しい香りを放つ。そのため、駐車場に車を止めて降り立った人たちが、この香りを嗅ぎ、あたりをきょろきょろ見わたし、不思議そうにして車を離れるのを目にすることがある。
最近、古木の枝に、痛みが生じて来たため、治療を始めており、気がかりでもある。
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2、シデコブシ(モクレン科)
山門を入ってすぐ左、鐘楼堂の近くにシデコブシ、幹直径13cm、高さ約3m、が植わっている。この木の花被片は12枚。
シデコブシは、愛知・岐阜・三重の東海三県にのみ自生する植物で、絶滅危惧U類に指定されている。また自生の西限に当たる三重県北西部、菰野町田光のシデコブシ群落は、2005年国の天然記念物に指定された。
3月末から4月上旬に可憐な、淡いピンク色の花をつける。開花した姿は、しめ縄(注連縄)につけられる紙製の飾り”しで(四手、垂)”に似ていることから、シデコブシ(四手(または垂)辛夷)と命名されたという。
この花びらは、美味しいようである。そのため、境内後ろの竹藪に越冬している多数のムクドリが旅立つ前に開花すると、鳥達についばまれ、咲きそろうまでもなく丸裸にされてしまう。よって、きれいな写真が撮れるか否かは、ムクドリの渡りに依存する。
本年21年は春の到来が早く、3月10日頃に開花したが、幸いムクドリの旅立ちが早く、難を逃れた。
この写真の撮影日(3月16日)も、モズがついばんでいたが、そのモズを押しのけて、モズの食べ荒らした跡を避けて、撮影した。
当寺に越冬するムクドリの数は約1000羽と推定される。ムクドリはねぐらの竹藪に入るまでに、面白い行動をする。まず当寺の周りの電線にずらりと並んで止まり、しばらく過ごす。その後、境内の裸木に移り、賑やかに一日の出来事を話したり、情報交換・反省会を行っているように見える。このとき、50羽のかたまりを確実に数えることができ、それが一本の裸木の約1/4に相当する。すると一本で約200羽となり、同じような大きさの裸木5本がほぼ同じようにムクドリの姿で黒く見えることから、全体ではおよそ1000羽となると推定した。なお、この調査は、風のない、よく晴れた、気持ち良い夕方行ったので、早めによいねぐらを獲得するために竹藪に入ったり、仲間を避けて茂みに身をよせたりする変わり者は少なく、誤差は1割に満たないと思える。
こうして数え終わった後、いたずら心に駆られて、大きく手を打った。するとこの約1000羽のムクドリが驚いて一斉に飛び立ち、ビュウビュウ、ゴウゴウと羽音をたてて、境内の上空をぐるぐる飛び回わった。その迫力ある様子に、昔見たヒッチコックのBirdsの映画を思い出して、少々怖くなって逃げ帰った。
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3、枝垂れ桜
境内に見事な山桜が植わっていただが、樹医による治療もむなしく、先年枯れてしまった。それを惜しんで、その地近くの庫裏の南側に、枝垂れ桜が平成18年に寄進された。今年21年、幹直径12cm、高さ3.5mに達し、鮮やかなピンク色の花が楽しめるようになった。来年からはライトアップをしてほしいとの声が上がっている。
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4、ハギ(マメ科)、萩
紅白の萩が山門前に植えられている。紅の萩、宮城野萩、は初夏と秋の彼岸の頃の二度、白は秋の彼岸の頃のみ、咲く。そのため、秋の彼岸には、多くの参詣者が咲き競う紅白の萩を愛でながら山門を出入りされる。
萩は比較的手が掛からないので、これは誤解かもしれぬが、境内に増やしたいと考えている。しかし、萩がこの地に合うのか、みるみる株が増え、周りに幅を利かせはじめたので、計画を中断している。「自然との共生」は、耳にはやさしいが、並大抵なことではないと実感している。
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5、サルスベリ(ミソハギ科)、猿滑り、百日紅
枝ぶりのよいサルスベリが、閻魔堂の前に植えられている。幹直径17cm、高さ3m。
その幹は滑らかで、猿も滑るというので、猿滑り、また、花(通常は紅色)は長く、百日も咲くというので、百日紅とも命名されている。
このサルスベリの花は、色が濃すぎず、淡すぎず、とても上品であるので、挿し木で、増やしつつある。
近くの方のご奉仕の方の手に掛かると、お盆の頃と、秋の彼岸の頃の、二度にわたり、花盛りを迎えるので、参詣の人々に喜ばれている。
白のサルスベリも、植えられている。
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6、ツバキ(ツバキ科)、椿
境内には、ヤブツバキからサザンカまでの多種の椿類があるが、庫裏の裏側に、大輪の椿が植えられている。幹直径7cm、高さ3m。
これは、約20年ほど前に、住職の恩師である、英国レスター大学の故M.C.R.Symons教授ご夫妻が当寺訪問の際植えられた、英国産の椿である。当初は直径20cm近くの大輪の花をつけたが、今では徐々に花は小さくなってきたが15cmには達する。この花の特徴は、開花すると、みるみる花を広げ、この写真のように平べったくなる。日本では開ききらない花が愛でられるため、このように大口を開けて快活に笑っているような椿は、あまり目にすることはないようである。
花にも、それを愛でる人たちの国民性が反映されるようである。
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7、ボタン(ボタン科)、牡丹
牡丹の植えられたお寺は多いが、当山にも、庫裏東側の裏庭に牡丹、シャクヤク(芍薬)が植えられ、本尊等の供花に用いられる。
大輪の牡丹が、本尊に供えられると、本堂全体が艶やかになり、また牡丹独特の香りが堂内に満ち、この時期の一番の楽しみである。
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