「キラ…」
扉が開くなり、イザークの嫌そうな声が響く。
「もう少し、何とかならないのか…」
聞きたい事があったので、キラの部屋を尋ねたのだが、
足あとのように点々と落ちている、着ていたものの残骸と
開いたまま青白い光を放つ端末と
そして、インナー状態でうつ伏せでベットに沈むキラ。
すうーっと飛んできたトリィを優雅な手付きでその手に止まらせたイザークは
深い溜息を付いた。
最近、解ったことなのだが。
キラもそしてアスランも、整理整頓というものが苦手らしい。
必要以上にモノを置かないタイプだから、足の踏み場が無いという事態は免れているものの、
綺麗サッパリしている時といえば、別任務である程度の期間艦を離れる時だけ。
部屋に本人達がいる時は、いつもこんな状態だ。
潔癖症とまではいかないものの、人並みには整頓されていないと落ち付かないイザークにとっては
呆れる要因の一つだった。
「ったく。子供か…」
イザークはトリィを肩に移すと、脱ぎ散らかした軍服を拾いあげていく。
そして纏めて椅子に掛けると、キラの傍で点滅する端末の画面を閉じた。
デスクに端末を移動させながら、片手でキラを揺さぶる。
「おい、風邪をひきたいのか」
「…ん…」
煩そうにイザークの手を払いのけるキラ。
「キラ」
ベットに腰を降ろしつつ尚もしつこくユラすと、睫が震え…うっすらと紫が覗いた。
覚醒を確認したイザークは、冷ややかにキラを見下ろし腕を組んだ。
「貴様はいつもそうだ。脱いだものは散らかしたまま、端末はオンラインのまま。仮にも軍人なら
例え勤務時間外でもそれ相応の生活態度を…ぉわっ」
イザークの体が唐突に揺らぐ。
にゅっと伸びたキラの手がイザークの後襟を掴むとそのままベットに引き倒したのだ。
間近にキラの半眼と向かい合う。そして…
「………………………………寒い」
何時もよりオクターブ低い掠れ声でそれだけ言うと、こちらの反応を待たぬまま
倒れたイザークの胸元でモソモソと丸くなる。そしてその口から再び寝息が漏れ始めるのに
時間は掛からなかった。
腕枕でうたた寝する体勢で、がっちりと軍服の胸元を固定されてしまったイザークは、
キラを引き剥がそうと試みるが、力の入らない体勢である上…此方の迷惑を他所に気持ちよさそうに
眠る顔に終いには戦意を削がれ、盛大な溜息吐くとベットに頬を埋め、半ばヤケ気味に自分もその目を閉じた。
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