インドア派■2003/3/31 |
広い多目的ルームで幾重にも連なる人垣の中心。 見るからに趣味は力自慢といった体格のいいモスグリーンの制服の男と 深紅の軍服の少年が対峙していた。 少年の方も背はそんなに低くはないのだが、その体躯の差は子供と大人とは いかないまでも頼りなげには見えてしまう。 試合内容も体格のいい青年の一方的なもの、に見えた。 茶色の髪の直ぐ傍で、腕が風を切り。 その風圧で髪が舞う。 ・・・2発、3発 しかし見る者が見れば、少年に無駄な動きがない事は一目瞭然だった。 その攻撃を避けるギリギリのラインを見極めて、少年は動いているのだ 4発、5発 それでも、反撃せず避けて後ろに下がり続けるだけならば、逃げ場は無くなる。 人垣の直ぐ間際。 『壁』が迫ってくる。 そして6発目が繰り出されたとき、 男の腕が完全に空を切った。 とん… ブーツが地面を蹴る軽い音を残して ターゲットの姿が消えたのだ。 「上っ」 ギャラリーの声に視線を移動させると、少年は繰り出された腕を支えに 相手の頭上高く舞いあがっていた。 そして背後に沈むのを待たずに体を反転させる。 ダークレッドの裾が翻り、 優雅ともいえる動きで、 脚が高く蹴り上げられる。 相手の「急所」の間際で、ひたり、と止められた足先。 男の動きも完全に停止した。 「…なぁ、ニコル」 「なんですか」 沸き起こる歓声の中、ディアッカがイヤそーうに目を細める。 「あの顔で、コレって…ちょっと反則じゃないの?」 「・・・アスランも一緒ですよ。あの強さ、尋常じゃないですからね…」 「ケド本人達の趣味って、機械弄りとパソコン弄りじゃなかったっけ」 「…最強のインドア派、ですよね・・・」 二人は顔を見合わせると 疲れたように溜息を吐いた。 |