黄昏2003/2/25
MSやジープが置かれている基地の一角。
オレンジ色に染まった風景に伸びる、長い影。

静かな湖面の如き眼差しで、空をじっと見上げる一人の少年。

それはまるで還る天を、仰ぎ見るかのようで。

「どうした、ホームシックか」

声を掛けると、
真中のボタンだけを留めた白いシャツに軍服のズボン姿のキラが、
背中越しに小さな笑みを返した。


「綺麗だから・・・見とれてただけですよ」


風に煽られる髪。
茶色い髪は、黄昏の光に蜂蜜色へと色を変える。


「こんなにも鮮やかに、空の色が変わるのを見るのは,初めてですから。」


キラはそう言って手を空に透かすと、目を細めた。


「外から見た地球はずっと蒼い色をしていたから・・・まさか地上から見上げた宇宙が、
こんなに色を変えていくものだったなんて・・・思いもしなかった」

「・・・・空の色だけで、そんなに感動できるものかねぇ」


苦笑交じりの呟きに返される、逆光に縁取られた・・・綺麗な笑顔。


「この場所は・・・僕の特等席になりそうです」




その、言葉通り。
夕方になるとキラはこの場所に現れるようになった。


黄昏の空を見上げる、女神に会える。


そんな噂が流れるのに、時間は掛からなかった。