Alcohol2003/1/22

軽やかなキー音が部屋に響き、モニタから漏れる光が部屋をぼんやりと照らす。
ベットに座って、キラは端末と向き合っていた。

本来なら、短い「休暇」で、ゆっくりと休んでいる筈だったのに。
データ解析の約束を一つ忘れていて、明日、出発時までに仕上げないといけない。
しかも思い出したのが、ついさっきというのが、泣ける。
量の方はあまりなくて、助かったのだが・・・。


だから。
背後で、部屋の扉が開く音がしても、聞きなれた足音だと分かって、また意識を端末に戻したのだ。

「キラ」

背後から甘い声と共に、長い腕がまわされる。
肩に埋まる重さ。
絹のような髪が、耳をくすぐった。


「ごめん、アスラン。今忙しいんだ」
キラはそう言いながら腕からすり抜けようとして・・・その動きが止まる。

「・・・・・・・・・・・・アスラン。君・・・」

くん、目を閉じたキラは、匂いをかぐ仕草をする。

「お酒の匂いがする・・・まさか飲んだ?」
「ああ」

少しだけどね。と耳元で機嫌良さそうに笑うアスランに、キラは軽く眉を上げ、肩を竦めた。


アスランはこう見えて結構お酒が好きだ。
香りとかが好きらしく、「飲む」というより「味わう」といった感じで、量は多くない。
だから、酒にのまれて酔いつぶれるような事はない・・・けど、あんまり「強い」という訳でもなくて・・・
表情に出ないから解りにくいが、今のアスランは完全に「酔っている」状態。
このべったり貼りついてくるのが証拠だ。

「いいの?いくら自由行動可だからってさ」
「艦じゃないし。出航は明日だから大丈夫」
「大丈夫って・・・」

アスランはまわした腕を少し緩めると、呆れ混じりのキラの顔をその手で包み込んだ。
他人にはけして見せる事のない、蕩けるような笑み。
それが近づいてくる。

「・・・いつもの、鉄壁ポーカーフェイスでクールなエースパイロットは何処にいった訳?」


ぽつりと呟くと、キラはその眼を細め、降りてくる口付けを受け入れた。

何度も何度も戯れるように、降ってくるキス。

酔うと、アスランはいつも、必要以上に触れようとした。
唇で、指先で。
目の見えない人が、その姿を感覚で感じるかのように。
何かを、必死に繋ぎとめようとするかのように。



(忙しいって・・・言っても通じないだろうね。酔っ払いには)


・・・・ま、もう少ししたら、アスラン寝るし。


キラは髪を撫でくる手に指を絡めると、諦めた表情で身を委ねた。