Encounter[緘口令]2003/5/12
「なんだって?」

管制室のモニターの前に立っていたディアッカの表情が変わる。

「キラを置いてきた?」

それは、喉元を噛み切らんと待ちうける獣の如く。
輸送機のパイロットは怯む心を抑えつつ、言葉を繋げる。

『は、はい。私達は離脱し貴方に迎えにくるように伝えてくれと・・・』
「…落ちた場所は」
『ポイント805 285-20です』

ディアッカは口許に手をやって、指を動かす。

「・・・ここに居る奴以外には言ったか?」
『いえ、本報告はこれからですが・・・・・・』


OK。
ディアッカは深く息を吐く。
そしてモニターに映るパイロット、さらに周囲の管制官達をぐるりと指差すと、真顔で叫んだ。

「いいか!この事はここだけの秘密だからな!」

『・・・は?』

てっきり責められると思って覚悟していたパイロットは、間の抜けた声で聞き返し。
管制官達も、増援派遣の為に動こうとしていた手を止める。
ディアッカは自分が出る為の輸送機を手配するよう指示を出しながら、切羽詰った顔で続ける。

「いくら誰もが予測不能で、どーしようもなかったって説明したって、あいつらには一切
カンケーないからな「キラが行方不明」で「オレと合流するはずだった」っていうトコしか耳にはいってない
からな。
オレが殺されるっての。キラなら大丈夫だって・・・オレ達でも敵わないのが、どうして
連合軍に撃墜されるよ。ナントカは盲目ってよく言ったもんだよなホント・・・」

ディアッカは、指示を終らせ管制室から飛び出す寸前、クルリと振り返ると〆とばかりに艶やかに
微笑む。

「いいか。言ったら・・・
呪うぞ


わかったな、と残したぞくりとするような凄艶な笑顔には、言葉通りの身の危険に通じる悪寒も間違い無く
混じっている・・・


管制官達はアイコンタクトでその団結力を
確かめ合った。