素肌に、シャツを羽織っただけの姿で、
キラは革椅子に座り、軽く脚を組んだ姿で暗闇の中端末に向かっていた。
キーボードの上を滑るような指さばきは、キーを叩くというよりも、撫でるといった感じで
全く音というものをさせず、しかし画面の上を走る膨大なデータは川のように流れてゆく。
連合の士官クラスの者の端末からしか侵入できないルートがどうしても必要だった。
そこで「軍」において、一番有効で油断を誘うことのできる手段・・・つまり売春紛いの事だが
それを使い上手く懐に入りこんだ。
適度に相手をし、相手が眠ったのを確認したところでベットを抜け出して執務室に忍び込んだのだ。
幾重もの障壁を無効化し、入った形跡をその都度消してゆく。
そして最奥に辿りつき、口に咥えていたディスクを、端末のスロットに滑らせる。
一瞬後、ディスクの中のウイルスはその身をデータの波に溶し、闇へと沈んでいった。
「何をやっている」
突如明るくなった執務室。
横に自分の姿が無い事に気付いた男が 探しに来たらしい。
キラは慌てること無く最後のキーを叩くと、ディスクを取り出し胸ポケットに仕舞い立ち上がる。
「・・・目が覚めなければ・・・」
小さく呟く声。
自ら起こした風に翻る髪。
キラの手元に気付いた男は、衛兵を呼ぼうと壁の受話器を取る。
しかし、それより一瞬早く手元の銃を取り、机を支えに高く跳んでいたキラはベットルームに着地し
枕を掴むと、それを男に向かって投げ付けた。
男の視界は白く覆われ、
直後くぐもった音が、短く放たれる。
力を無くした男の手から滑り落ちた受話器は壁へ当って、固い音と共に反発を繰り返し
体は床に崩れ落ちる。
ふわと舞い散る、血の滲んだ羽毛の向こう側。
「死ななくて…済んだのに」
サイレンサーのついた銃口からたなびく、白煙。
キラは履いていたものを身につけ、窓に近づくと。
そのまま後ろに倒れるように、階下地上へと、その身を躍らせた。
闇に紛れて境界の有刺鉄線を飛び越えると、一台のジープが止まっていた。
キラが乗りこむと、待ち構えていたように走り出す。
運転席でハンドルを握る人物に、僅かに目を見張りながらも、
キラは靡く髪をそのままに、手渡された通信機に耳に当てた。
「キラです」
『どうでしたか』
「此方の準備はできました。後は宜しくお願いします」
『了解です』
短い通信を終え通信機を置くと、キラは助手席のシートに沈みこんだ。
「御苦労だったね」
「…いえ」
舗装状況の良くない道の、定期的な振動に僅かに眉間に皺を寄せたキラは
運転手に背を向けるようにして体を丸くさせた。
「どうしたんですか。バルトフェルド隊長自らお出迎えだなんて」
「一応キラは預かりものだからねぇ、何かあったら助けに行かないと、怖いヒトたちが
降りてくるからねぇ。・・・どうかね流石に堪えたかな」
「・・・まぁ・・・久し振りでしたので」
「『変なこと』はされなかったかね」
「・・・・・・・ノーマルな方でしたよ」
「・・・ほう?」
砂漠のある方角から吹いて来る冷たい独特の風が止まる。
ジープが止まっのだ。
街から抜けた直ぐの、何の変哲も無い道端で。
・・・駐屯地までは、まだ距離があるのに。
キラが訝しげに、バルトフェルドを見た。
「どうしたんですか、こんな所っ、痛っ!!」
ガタン。
音がして、突如体がバランスを失い、舌を噛みそうになった
キラは目をしばたいて
今起こっている状況を確認する。
ここは、車の助手席。
視界に夜空が広がる。
…覆い被さっている、バルトフェルド越しに。
「偶には、こういうシチュエーションもどうかね?」
真昼のように明るい月が、精悍な顔を背後から浮び上がらせる。
前髪をクシャリとやりながら、キラは深い溜息を吐いた。
「…よくないです…どういうつもりですか・・・」
「甘い」
「え?」
「この香り、覚えがある。我慢する事はない。誘淫剤を打たれただろう」
「・……」
バルトフェルドは運転席から体を移動させると、キラの脚の間に膝をついて、シートに肩を押しつける。
そして少し荒めの口付を落とした。
「…っ」
乱暴なのに、何処か計算されたそれは。
冷静な心を何処かへと消し去ってしまう。
バルトフェルドの手は、元々はだけていたシャツへと掛かる。
「・・・まさか、ここでヤる気ですか?」
「そのままだと辛いだろう?」
背筋をなぞるようにシャツをずらし、胸元に口付ける。
「ちょっ、冗談・…」
「飲んで効く媚薬なら、吐かせりゃ済むがね。打たれたのは解毒剤か切れるのを待つしか手がない訳だ」
「もう、打たれて大分経ってますし!!しかも、だっ誰も頼んでません!!」
「だが六時間後には作戦開始だ。キラにも出てもらわなくちゃならないからねぇ」
反論する間にもベルトが外され、片足だけがジーンズから抜かれる。
肌を伝う、ひやりとした外気。
長い指が下肢へと侵入し、撫上げる。
そしてキラの足を抱え上げ肩に掛けたバルトフェルドは、躊躇うこと無く顔を埋めた。
生暖かいものが敏感な部分を這いまわる。
「・・っと、本っ当に…やめっ…くださ・・・」
ワザと唾液の音をさせるようにして舐め上げたバルトフェルドは、
挑発的な目でキラを見上げた。
「止めろと云う割には、反応がいいんじゃないのかね」
舌を出し、舐め取ったばかりの先走りの液を見せつける。
「やはり、スリルが決めてかな?誰かここを通ったら、何やってるか一目瞭然だしねぇ」
ワザと見えるように、立ちあがりかけたモノを舐めるとニヤとバルトフェルドは笑みを浮べた
(お…面白がってる……)
溶けかかる思考の先で、キラは必死に自我を保とうとするが。
「…っ」
指の摩擦で、先端が抉られる。
指が後口をなぞる。
そして指が侵入してきた。
「っあぁ・・」
散々弄られた後なのに、誘淫剤の名残の効果からか、自分の意志とは関係なく
面白いように反応を起こす。
キラの体が大きくしなった。
しかし車のシートは、ベットのようにはゆかず、逃げる事は許さない。
「おいおい、そんなに声上げていいのかな。静かだから結構遠くまで響んじゃないかねぇ」
二本。
指が増やされる。
長い指はそれだけで凶器だった。
液で濡れた指は楽々と奥まで侵入し内壁を掻き回す。
弱いところは全て承知しているから、迷いも無くその場所を探り当てた。
「あぁぁっ」
夜の砂漠の冷たい外気に逆らって、体が熱で火照り、
額に汗が薄っすらと滲み始める。
そして、痛い程に敏感に反り立ったモノが、ぐっと握りこまれた。
「…何する・・・ん・・・ぁっ」
バルトフェルドは答えずに指を引き抜くと、自らを宛がって一気に突きたてた。
が、そのまま動くことなく、キラを見下ろす。
動かない圧迫感はむず痒さだけをもたらす。
ゆっくりと。
その内壁が擦れていくのを感じるように。
じっとりと挿入され、引きぬく行為にも繰り返される。
「・…隊っ長・・・・」
「何」
「もう、やめ…」
拘束された楔は解放されることなく心臓の音と同じ速度で脈打っている。
もう限界だった。
指を解こうとして、思いっきり手を押し付けられる。
「上司に無断で何、勝手なことやってるのかな」
「っ、いい加減・・にっ…して・…っあ」
語尾が跳ねあがる。
一つ大きく奥まで突かれたのだ。
そして、そのまま奥へ進みつづけるように再び停止する。
こちらも、イク直前で止められ、相当締め付けている筈だった。
質量は体の中で大きく増しているが、まだ余裕はあるようで。
「まだ奥に残ってるねぇ」
指がキラの唇に添わされ、乱暴な口付けに取って変わられる。
口内を蹂躙するように。
「ナチュラルのやつが」
一転し、激しさを増した蹂躙しつくされるような律動に
キラは堪らずバルトフェルドにしがみ付いた。
体の揺れと共に途切れる熱を孕んだ息遣いが、
静まり返った夜の空気に、すいこまれていった。