今年2月14日に英国の推理小説作家ディック・フランシスが亡くなった。
日本では余り有名とは言えないが、彼が残した競馬シリーズの推理小説郡はどれもとても面白い。英国では知らない人の方が少ないくらいの人気作家です。日本にも多くのファンがいて、彼の小説に最多登場回数の主人公シッド・ハレーにちなんで、その訃報を載せた記事に「さよならシッド・ハレー」と書かれていた。
簡単に略歴を紹介すると、
イギリスの競馬(障害競走)のリーディングジョッキーやエリザベス王太后の専属騎手を勤めるほどの華々しい成績を残して1957年に引退した後、新聞記者を経て作家(1962年で「本命」でデビュー)になり、その後1年に1冊の作品を発表し数々の賞を受けるほどの大作家となった。
約10年前に奥さんを亡くし、しばらく作品が途絶えていたのですが、最近は息子との共著の形で再会した3作品目でその偉大な生涯を閉じた。
つい先日、「再起」と「祝宴」を読んで改めてその面白さに触れたのでした。
彼自身も非常に辛い思いをした時期がありました。
2000年に妻が亡くなり、その後、毎年発表していた作品を出さなくなったのを受け、マスコミから実は奥さんがゴーストライターではなかったのか?という疑惑を持たれた。障害騎手としても才能と作家としての才能が一人の人間に備わっていることへの嫉妬が大きく疑問となって攻撃された。
一時はそれを認めるような発言をしていたようですが、最終的に奥さんのメアリーさんが作品の協力者であったという形で決着したようです。ここいらの詳しい事情は私には余りよくわかりませんが、誰が書こうがその作品の面白さが変るわけではありません。やはり偉大な作家であることに変りはないと思います。
私が最初に、その作品に触れたのは今から15年くらい前のことです。当時、中部国際空港株式会社というところで働いていて、名古屋の天白区植田に住んでいたので通勤途中に本を読もうと買ったのが「興奮」でした。
この作品は、著作の中でも有名で推理探偵賞を受賞した作品です。
以来、その面白さに虜になり、全作品を読みました。どれも文句なく面白い。
現在43作品が出版されているはずです。
主人公は毎回変りますが、何回か同じ主人公が出てきます。最多が前述のシッド・ハレーで4回です。
仕事柄、最近は小説よりもビジネス書や政治ものを読む機会が多いのですが、この作家が亡くなったことは残念でした。
どこに惹かれるのか?と考えてみると、推理小説といってもどんでん返しがあるわけではありません。主人公は一様に誠実でタフで行動力があってと、探偵小説の見本のような存在です。また、文体が面白い。「呪いの言葉を吐いた」なんてな調子で一切汚い言葉が出てこない。多分、そうしたオーソドックスな展開と文体がすきなのかもしれません。やはり、うまく説明できません。
ご冥福を祈ります。
享年89歳。合掌。
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