かめさんの詩集
第七弾
千切れ叢
4
春
故郷の小川の辺りに佇み
いなくなった目高
の数を数えあげるまで
立ち去ろうとしない
少年
子供たちに
仲間外れにされて
悄然としている
夏
を蝉時雨といっしょに
タモで掬ってしまった
少年
里に降りてきて
赤蜻蛉は
少年
の肩に止って
秋
を協作する
菩提樹に
しがみついて
冬
を過ごしている
空蝉に宿る
少年
5
犬の遠吠が
太古を揺らして
谺するのを待ち
盗掘されて
あちこちに散り散りになって
発見されることのない
遺跡の数々を
残らず取り戻して
未来を組み立てる
時間を止めて
6
自画像を描く
描いては破る
破っては描く
出会った他人
みんなに僕の
クローンを植
え僕は逃げる
人の読まない詩を書き
だれも書かなかった詩を口遊みながら
おのが身の
闇より吠えて
夜半の秋
蕪村