かめさんの詩集

第十二弾

古稀 そのアット ランダム

 

月の氷にぶっつかって

谺になって

えもいわれぬ

清冽な

もののあわれ

を育んでいるうちに

犬の遠吠は

帰り途を失くしてしまった

 

 

もし旅にでかけたら

途中

雑木林の懐しい香りを

一杯浴びて

先祖返えりのぶなの新種に出会えたら

肺癌の手術を受けて

地球の重さ 軽さを知った

ぼくの脱け殻を

その根元に

さりげなく埋めてまいります

 

 

気が付くと

秋に鳴くのを忘れていた

地中の虫の

かぼそい声が

小正月の月

に屈いていた

 

 

言葉を交わした数知れぬ

人たちの鏡のなかで

勝手に増殖していってしまった

ぼくの欠片を一つ一つ掻き集めて復元する

大変な作業は始まったばかりです

 

描いても そして 画いても

自画像はまだできあがりません

 

 

枝も撓に実る

冬の南天

 

老婆が

止処なく

溢す

愚痴を

目の粗い

笊で

掬いあげ

 

明日への

心の籠った

お土産に

 

手を通したことのない

上衣の底のない

内ポケットに

大事に仕舞ってある

 

 

 

田舎の虚しさは

充実に充ちている

 ‐ 三富朽葉

 

       

 

 

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