かめさんの詩集
第十一弾
方舟に乗り損なった少年ら III
向こうからやってきて
擦れ違っていったものがいる
後ろから追い着いてきて
先へ行ってしまったものがいる
向こうからやってきたものの跡に付いていって
追い着いてきて先へ行ってしまったものが
彼方此方に落していったものを
悉く拾い集めて
少年は
二億五千万年の眠りから
蘇生した
岩塩層の中の
細菌に
戻してやろうと考えている
気が付くと
゛…この道はいつか来た道
あぁあ そうだよ……゛
の旋律を口遊みながら歩いている
「この先 道はありません 危険ですから
立ち入らないで下さい」
いたるところにある
見えない立て札の前に立つ
゛真っ直ぐ ドンドン行きなさい゛
とやさしく背を押す
手
の温もりが
爪先に傳ってくるのを待つ
少年
の足に合う靴はまだ見付かっていない
蟻地獄
心の闇
を食い尽す ‐ 無名少年のうた