2017年課題研究作品

 10 年前に製作した弓道的中表示板は常時屋外設置だったため、風雨や紫外線により劣化、老朽化してしまった。今年度の3 年生電気工学科には弓道部員が多数いたので思い切って新しい表示板を製作することにした。スイッチと表示板を直接接続すると41 本の電線が必要となるため、前回と同じくPIC を用いて通信制御を行うことにより電線数を4 本とした。前回の反省から今回は普段は屋内にしまっておいて使用時のみ設置するものとし、その他にもいくつかの改良を行った。 
  弓道的中表示板の製作 
 1.表示回路の設計  
   
 発光ダイオードの駆動回路と駆動方式を学習した後、○と×を表示する回路をいろいろと考えた。
2.表示ユニット(一射分の○×)の製作 
      前回の表示板を分解し、一射分の○×表示(表示ユニット)のLED、電流制限抵抗のハンダ付けを取り外し、サンドペーパーをかけた後、黒色に再塗装してから、新たなLED、電流制限抵抗をハンダ付けした。
3.ポリスチレンフォーム遮光板の製作
      LED は輝度が高く指向性も強いので前面に乳白色のポリプロピレンシートを入れて光を拡散させることにより、光を和らげ広角な視野とするが、そのために○と×の形がぼやけてしまうのを防ぐため、ポリスチレンフォームのボードを○と×の形にくりぬいて黒色に塗装したものをLED の周りに設置することによりシャープな○と×に見える様にした。また、このポリスチレンフォームは同時に前面のパネルを支える構造材も兼ねている。
4.表示板本体の製作 
   弓道的中表示板の製作

弓道的中表示板の製作
  基台としてアルミ複合板を使用した。アルミ接合番はプラスチック樹脂をアルミ板でサンドした構造のもので、アクリル板に比べて加工しやすく静電気の発生も抑えられるもので看板に利用されている材料である。これをアルミフレームの寸法に合わせて切断し、前面の透明アクリル板と乳白色ポリプロピレンシートも同様に切断した。
 次にアルミの不等辺アングルを切断してフレームを製作。特に外側のフレームは45 °に切断して超強力接着剤で接着して作成した後、サンドペーパーによる研磨と黒色塗装を行い、最後に壁掛け用のアイボルトを装着した。また、内側フレームには、ねじ止め用にリベットナットを装着した。
 アルミ複合版の基台に内側アルミフレームを装着し、低発泡塩ビ板で作った絶縁スペーサーを貼り付け、そこにPIC 基板、制御基板、電源基板等を取り付けて配線を行い、さらに各自がそれぞれ製作した表示ユニットを4枚ずつ計20枚取り付け配線を行った。結線終了後にPIC によるテスト動作を行わせて配線に誤りやミスの無いことを確認した。
5.コントローラー(スイッチ入力部)の製作 
   弓道的中表示板の製作

弓道的中表示板の製作


  まず、旧表示板のコントローラーを解体してスイッチを取り出し、次にアルミシャーシーにスイッチ、状態表示用2色LED を取り付ける穴を開け黒色塗装した。それにスイッチ、2色LED を取り付け、さらにそれらを接続するスイッチ用基板を作成して結線を行った。
6.試運転、動作確認、最終組立 
   弓道的中表示板の製作  的中表示板とコントローラーを接続し動作の確認を行った後、基台本体に透明アクリル板、ポリプロピレンシート、アルミフレームを取り付けて最終組立を行った。
7.道場への設置 
   

弓道的中表示板の製作
  まず、前回の表示板を固定していたボルトをサンダーで切断し、壁に接着してあったゴムシートをはがして、その跡を目立たなくさせるために塗装を行った。
 次に壁にコンクリートドリルで穴を開け、コンクリートプラグを打ち込んだ後、壁掛け用のフックプレートをねじ止めして、表示板を簡単にかけられるようにした。
  10 年前に作った表示板の老朽化により今回新たにLED 的中表示板を作製することになった。前回は常時据え付け式にしたため老朽化が進んだことを考慮して、今回は使用時に随時取り付け、取り外しができるように、的数をオーソドックスな5 人立用としたり、10年間の経験を経て、組み立て方や使用機材も変更し、大幅な小型、軽量化を行った。
 作業は旧表示板の解体と部品取りから始まったが、生徒諸君がハンダごてや工具の取り扱いに慣れていなかったため、これに思った以上に時間がかかった。また、ここまであまりものづくりの実習がなく、あっても完成品をつくることがなかったため、生徒諸君の感想にも書かれているが、最初はとにかく雑な作業が多かった。「これは後輩たちが使う実用品なんだから」と、とにかく「丁寧に」「丁寧に」と何回も指摘した。そのかいあってか最後の方は自分たちで「丁寧に」と気をつけて作業できるようになったと思う。「ものをつくる」ということについて、正確な加工が必要なこと、常に気を抜いてはいけないこと、できあがったときの充実感と達成感など大切なことは十分に学んでくれたと思う。
 予定を大幅に越えて2月中旬までかかってしまい自宅学習中にもかかわらず出校し最後は休日の作業となったが、3年間クラブでやってきただけあると感心すると同時に、その努力に感謝したいと思う。
 最後になりましたが、PIC のC 言語プログラムについて貴重なご助言をいただいた伊勢工業高校の日置智典先生、表示板の立番号のカッティングシートを作成していただいた本校繊維デザイン科の植村彰先生にこの場で感謝したいと思います。
 



 

弓道用的中表示器の製作

2007年課題研究作品

今回は弓道用の的中表示器を製作しました。スイッチとLEDを直に配線すると60本の信号線が必要となるため、PICを用いてデータをシリアル変換し、電源と信号線の4本で信号伝達を行えるよう工夫しました。
         
1.表示セルの模擬設置

まず、一射分の○×表示(表示セル)を作り、実際に道場へ持って行き、見え方などを検討したところ、2つの問題点が発覚しました。
・高輝度LEDを用いても午後2時くらいにまともに太陽光が当たると見えにくい。
・高輝度タイプは視野角が狭く、道場の端からだと見えない
2つの問題点をいろいろと実験して確かめた結果以下の方法を採用することになりました。
・LEDにキャップをかぶせて光を拡散させることにより、表示を明るく見せる。
・表示セルを10゜傾けて設置することにより道場の中心に光軸がくるようにする。
2.PIC基板の製作

PICを扱うのは初めてなので、シミュレーション用のPIC基板、スイッチ入力部、表示部を製作し、回路の検討、プログラムの開発に使用。
基板をフォトエッチングして、穴開け、切断、ハンダ付をそれぞれ分担。
3.表示セルの製作

表示セルは全部で7×4=28枚必要で、市販のフォトエッチング基板は寸法取りに余分が出て不経済なため、市内の基板製作会社である松和産業に相談したところ、「学校のことなら…」と無料で30枚の基板を製作していただけることになりました。

 できあがった本格的な基板に4本の抵抗と12個の高輝度LED、1個の接続用コネクタを取り付け。
4.LEDキャップの制作

高輝度LEDの光を拡散させるためのキャップを制作。ABS製のパイプを長さ12mmに切断しヤスリがけで整形したものに、表面をサンドペーパーがけした1mm厚の透明アクリルを円形にパンチしたものを接着剤で接着しました。
1枚の表示セルにつきLED17個だから、17×28=476≒500個のキャップを製作。大変な作業となりました。
できあがったLEDキャップを表示セルのLEDに取り付けて表示セルが完成です。

5.PIC制御回路の製作

スイッチ入力制御部のプリント回路が大きくなり、基板のフォトエッチングを行うのに本校の露光器で露光できないことが判明。(株)サンハヤトに相談すると「うちでやってあげましょう」との言葉をいただき、パターン図とフォトエッチング基板を送って(株)サンハヤトで露光、エッチングをやっていただいて送っていただいた。

制御基板にPICと74HC574や抵抗、コンデンサ類をハンダ付けして、スイッチ部分の回路と制御回路をコネクタ接続して完成。

表示部の制御回路はPICを使った信号受信部と74HC574を用いたラッチ回路を別基板としたため、学校で製作。
今回は屋外で使用する表示板であるため、すべての基板にグリーンレジスト。
6.スイッチ入力部の製作

アルミシャーシーに入力スイッチ、状態表示用2色LED、キー電源スイッチ、矢取りスイッチを取り付ける穴を開け、同時に保護用に透明アクリル板にLED以外の穴を開けて、取付け配線。
7.表示板フレームの作成

まず、木製フレームを組み立て、それをプラスチックをアルミでサンドイッチした複合版に取り付け塗装。
8.表示板の組み立て・動作試験

表示板フレームに表示セルとPIC回路、ラッチ回路を取り付けて配線。

この段階で、スイッチ入力部と接続して回路の動作チェック。
9.アルミフレームの製作

今回の表示板は、屋外に取り付けて使用するため、表示板を保護、防水するためにアルミのフレームに透明アクリル板をつけたものを表示板の上にかぶせることに。

まず、アルミのアングルを切断し、これを機械科の伊藤先生にお願いして溶接していただいた。そうしてできあがったアルミフレームを塗装した後、透明アクリル板を接着。このフレームを表示板本体に取り付けて完成。
10.据え付け工事

完成した表示板を弓道場に運び、据え付け工事を行った。
まず、看的場でスイッチを操作する人間が道場の様子を見ることのできる窓をブロック塀に開ける作業を行った。厚さ20cmのブロック塀にサンダーで切り込みを入れ、コンクリートたがねとハンマーで壊し、またサンダーを使うといった繰り返しで窓穴を開けた。

開いた穴にあらかじめ作っておいた透明アクリルを張ったボックスを埋め込んで完成

次に看的場内部にスイッチ制御部をウォールボックス内に取り付け、電気工事を施した。

最後に看的場外壁に穴を開けアンカープラグを打ち込み、表示板を固定。さらにアルミフレームをかぶせて完成。
長年、弓道部の顧問をしてきて、いつかは電光表示板を作りたいと思っていたが、作業の量を考えるとなかなか課題研究に取り入れることができなかった。今年電気工学科の3年生に部員が8名いたため、思い切ってやってみようということになった。

昨年までに製作した「電気工事室デジタル時計」や「汎用デジタルカウンター」に比べて大幅に作業時間がかかったのは、PICを用いた制御回路を作るのが初めてで開発に時間がかかったこと、製作物が大型で非常に作業量が多かったこと、屋外使用なので防水のため正確な工作が必要だったことがその原因であったと思う。

開発については夏頃から準備を進めてきたのだが、なかなか思うように行かず、回路設計とプログラムに年内一杯までかかってしまったことが大きかった。本来、時間があれば生徒にもPICについて学習してもらい、プログラミングもしてもらうつもりだったのだが、結局時間がなくてできなかったことが残念だった。

それでも「ものをつくる」ということについて、正確な加工が必要なこと、常に気を抜いてはいけないこと、できあがったときの充実感と達成感など大切なことは十分に学んでくれたと思う。

予定を大幅に越えて2月末までかかってしまい、自宅学習中にもかかわらず、毎週実習室が空く金曜〜月曜に登校して作業してくれた生徒諸君はさすがに3年間クラブで毎日練習をしてきただけのことはあると感心すると同時に、その努力に感謝したいと思う。

最後になりましたが、今回参考にしたのは近くの武道館弓道場に設置されている600万円の電光表示板でしたが、それとほぼ同性能を有する今回の表示板を材料費10万円未満で製作することができたのは、表示セルの基板30枚を無償提供していただいた株式会社松和産業様、学校では露光できないサイズの基板の露光、エッチングを無料でしていただいた(株)サンハヤト様、屋外看板の設置に関して防水処理などに多くの助言をいただいた世古美装様、アルミフレームの溶接をしていただいた機械科の伊藤先生、そしていろいろと相談やお手伝いをいただいた中村先生をはじめとする電気工学科の諸先生方の協力のおかげであることを記して、この場で感謝したいと思います。