毎年、松工祭の時に電気研究部がブラックライトハウスを出品しているが、その光源は昔ながらの蛍光灯型のものであり、大きい上に割れる恐れもあり、取り扱いが大変だった。今回の課題研究では紫外線LEDを使用してLEDブラックライトを製作した。 |
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1.関連知識の学習 |
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まず、ブラックライト(紫外線)について学習し、次に発光ダイオードの駆動回路について学習した後、実際の回路を設計した。
a)ブラックライト
紫より周波数の高い電磁波(光)を紫外線といい、目には見えないため、ブラックライトと呼ばれる。紫外線は目には見えないが、蛍光物質に当たると蛍光を発して目に見えるようになる。また、家庭用洗剤は洗い上がりを白く見せるために蛍光剤が入っているので、白い洗濯物(カッターシャツ、ハンカチ、Tシャツなど)も光る。その他、自然界では完熟バナナのシュガースポットは蛍光性クロロフィルを育成するので光るし、ビタミンBも光ることが知られている。
紫外線はそのエネルギーによっては人体に有害なものとなるが、今回使用する紫外線LEDは、自然光にも含まれる人体に安全なUV-A を発光するものである。
b)LED駆動回路と電流制限抵抗
LEDを点灯させるにはそのLEDの定格電圧Vd と定格電流Id、電源電圧Vから電流制限抵抗Rを決めなければならない。今回は61個のLEDを図のように配置するため、1回路のLED数を4〜6個とし、その区域を色分けしてそれぞれの回路に必要な電流制限抵抗を計算して設計した。 |
2.LED 基板の製作 |
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エッチング基板 |
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完成したLED 基板 |
・プリント配線基板の製作
設計した回路を実際の配線パターンにし、それをエッチングにより製作した。さらにできあがった基板に酸化防止のグリーンレジストを塗布し、ハンダ付け部分はそのレジストをはがしてハンダ付けをしやすくするフラックスを塗布した。
・ハンダ付け
作成したプリント基板にLED 、抵抗、リード線などをハンダ付けした。1区画ずつハンダ付けしては点灯確認を行い、光軸などの調整を行った。 |
3.各種パーツの製作、加工 |
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ポリスチレンボードの穴開け
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製作に必要な各種のパーツを班別に担当して製作した。
a)ポリスチレンフォーム遮光板の製作
@成形
ポリスチレンボードを寸法に切断した後、LED表示器の部分をスチロールカッターで○形にくり抜いた。
A黒色に塗装 |
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アルミ複合板の穴開け
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b)表示板の製作
@アルミ複合版、透明アクリル板の切断
基台となるアルミ複合板と透明アクリル板をスライドのこで切断。
Aアルミ複合版の穴開け
基台となるアルミ複合板に表示板、電源、アルミ枠を取り付けるための穴を開けた。 |
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アルミアングルの切断
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c)アルミ枠の製作
@アルミアングルの切断、穴開け
ライトの外側フレームとそれを取り付けるための内枠をそれぞれアルミのアングルを切断、穴開けして製作。
A外側フレームの接着、塗装 |
4.組立 |
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組立作業

試験点灯
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@アルミ複合版にLED 基板、電源、内枠の取付と配線
アルミ複合板の基台にLED 基板、電源、アルミ内枠を取り付け、配線を行って動作確認をした。
Aポリスチレンフォーム遮光板を部品、配線に合わせて削る
ポリスチレンフォームを実際の配置の凹凸に合わせて切削して、ぴったりと合うように加工。 |
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アルミ内枠に取り付けたリベットナット

組立作業完了
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Bアルミ内枠へのリベットナット取付
外側フレームを取り付けるためのリベットナットをアルミ内枠に取り付けた。
C外側フレームの取付 |
5.動作テスト、修正、完成 |
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図1 指向性 図2 拡散光
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エンドミル切削後のアクリル板 |
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完成したLED ブラックライトと
従来の蛍光灯ブラックライト |
できあがったブラックライトをブラックライトハウスに設置して点灯試験を行った。
点灯試験を行ったところ、図1 のようにLEDの光の指向性が強すぎてほぼ真下にしか紫外線が照射されないことが判明した。いろいろなもので試行錯誤した結果、ライトの前面のカバーのアクリル板を透明なものから光拡散型のものにすると図2のような拡散光が得られることがわかった。
問題が解決したと思った矢先、次の問題が発生。前面の透明アクリル板は厚さ2mm のものを使用し、それに合わせて設計していたのだが、光拡散型の模様アクリルは厚さ3mm
のものしか製造していないことが判明した。いろいろと検討した結果、機械科のエンドミルという工具を使用すれば、アクリル板の一部だけを3mm から2mm
厚に削れることが分かったので、機械科の先生にお願いして削っていただいた。 |
毎年、松工祭に出品しているブラックライトハウスの紫外線ブラックライトを蛍光管方式からLED方式に変えたいとずっと思いつつ、電気研究部では予算がないことからあきらめていたが、今回、電気工学科の課題研究として行うことした。
まず最初に紫外線について学習し、次にLED回路について学習をして基本的な設計をおこなった。ここまでは普段の座学の延長で生徒諸君も慣れたものだったが、いざ製作が始まると、慣れないための戸惑いが大きかったようだ。ここまであまりものづくりの実習
がなく、あっても完成品をつくることがなかったため、生徒諸君の感想にも書かれているが、最初はとにかく雑な作業が多かった。「これは後輩たちが松工祭で使う実用品なんだから」と、とにかく「丁寧に」「丁寧に」と何回も指摘した。そのかいあってか最後の方は自分たちで「丁寧に」と気をつけて作業できるようになったと思う。また、最初はコンマ何ミリ単位の加工の正確さの話をしてもなかなかピンとこないような場面もあったが、作が進むにつれて、体験を重ねて精度の大切さも理解してくれたと思う。「ものをつくる」ということについて、正確な加工が必要なこと、常に気を抜いてはいけないこと、できあがったときの充実感と達成感など大切なことは十分に学んでくれたと思う。
2月中旬までかかってしまい自宅学習中にもかかわらず出校しての作業となったが、おかげで立派なものが完成できたので、その努力に感謝したいと思う。
最後になりましたが、アクリル板のエンドミルによる切削加工をしていただいた機械科の桑原先生、笠井先生に感謝したいと思います。 |
松工祭でのブラックライトハウス |
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ブラックライトハウス外観
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内部 蛍光塗料による絵 |

内部 蛍光塗料による絵 |
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