毎度ですがこの文章に資料的価値は一切ございません。よくよくお含み置き下さい
 
 さて今年は遙か彼方の東北松島での開催。学生時代に半日かけて在来で行った思い出が頭をよぎる。どうせ時間がかかるならば、楽しんでしまおうと夜行のお座敷列車貸し切りで行くことを選択した。
 車内で宴会、持ち込みOKなので、蜜酒かフルーツワインをフルボトル提供しようかと思ったが、余ることを考えてやめた。今回はのんびりと気負わずに楽しみたい。
 
 開催日を一週間間違えるというおおぼけをやらかしたものの、無事に当日を迎え、まずは東京上野駅に降り立った。集合場所案内兼切符引換券になっている葉書を片手に、飲料水も確保しつつ歩いていくと、目に飛び込んできたのは。
 目立つ服装はしていないにもかかわらず微妙に雰囲気があれでそれでなにで、人の目が吸い寄せられた後にふっとそれる集団。
 あれだ。
 はい無事に合流できて集団の一員となり、切符も入手できました。ここ二年、参加者の間でたいそう好評を博しているシール交換企画のシールも手に入れられた。お座敷列車の切符(硬券)を模したものだ。今回は自分も作っているので(猫の)後ろめたさ無くいただける。
 皆さんクーラーボックスやカート付きのキャリーに酒瓶やらつまみやらを満載していらっしゃる。蜜酒の一瓶ぐらいなんでもなかったようだ。
 出身地の鉄道についてなどのんびり話していると、
「日本SF会の皆様」

とアナウンスが流れた。いわく言い難い空気が参加者の間に漂った。
 おいといてー。という感じで出発ホームにぞろぞろと向かう。ほどなく列車が入ってきた。と同時に三脚を立てていた方々がシャッターを切る。てっちゃんだ。てっちゃんがいる。列車に乗り込んでから知ったのだが、今回使用されたお座敷列車車両は、国際コンクールで賞をとったものだった。なるほど三脚で写真をとるはずだ。
 乗り込んでしばらくは、荷物の入れ場所を確認したりと忙しなかったが、動き出すころになると、他の参加者の方々とのんびり会話を楽しむようになっていた。毎年おなじみの、SF大会てぬぐいをつくっていらっしゃるかたが行商にみえたので、一枚購入。来年はSF浴衣も買いたい。その間にも列車は動き、駅で時間あわせの停車をしたりもする。
 東京圏内です。地方の弱小私鉄駅ではございません。退社後遊んだか、残業あがりの方々がホームにたくさんいらっしゃいます。
 さらしものです。そのうち開き直ったらしい他の方と、先ほど購入したSFてぬぐいを窓に吊した。なんだなんだとのぞき込む人あり、理解しがたいものを見た目をする人あり。反応をみるのも、それはそれで結構楽しい。自分も観察されているという事実を頭から消し去れば。
 さて、今回「旅のしおり」と「歌集」が配られた。小学校で遠足や修学旅行の時に配られる形式を模してある。時間調整目的の停車駅を「惑星〜ステーション」などと書いてあり、ベタといえばベタだがそれなりに楽しい。また、歌集は替え歌や「愛國戦隊大日本」などと笑える歌ばかりになっていた。「ぞうさん」の某ミサイル替え歌とか。てー○どんてー○どんいーつまでつづけるの。
 そろそろ宴会車両に足を運ぶ。うわあ宴会だ。持ち込みの酒瓶とつまみが卓上せましとならんでいる。そのつまみのなかにケーキがあるのはご愛敬。飲め(ま)ない人の存在が前提であるし、SF者は何でも綺麗に残さずいただくが心情だし。
 猫の話などしながらそれらをいただく。原材料は聞き損ねたがペースト状のものや、各地の名物など普段では食べられないものが他種類あって、非常に楽しめた。
 特筆すべきが飲用(第一候補に「陰陽」がでる私の○TOKブラボー)みりん。みりんはもともと、女性向けにデザートワインのようなものとして作られたもので、それを再現したそうだ。
 ねっとりとしていることを予想してロックでいただいたが、以外にさらりとしていた。アルコール度数は確認し忘れたが、きつさがなく飲みやすかった。御一緒した方は気に入ったらしく、杯を重ねていらした。
 少し気分がよくなったところで、カラオケ車両に移動。予想通り、アニメ・特撮大会になっていた。「愛・おぼえていますか」の男声合唱とか。この界隈に縁のない、カラオケや書物、映画がコミュニケーションツールである人から見たら「きもい」以外の何者でもないのだろうなと苦笑しながら思った。
 しかしカラオケ画像が、二昔前ぐらいのCGを彷彿とさせるものでございましたよ。そして何故転がっていたのか日○サイエンス計算尺特集号。答え:SF大会だから。
 少しは寝ておかないと保たないので、三時過ぎぐらいに寝部屋車両に退却。寝部屋と言っても、そこで宴会をしないだけで、布団もなにもない。だが横になれるだけ、一般の夜行列車よりはいいだろう。持参の膝掛けを布団代わりにしておやすみなさい。
 結局じかに身体に伝わる振動のためか、うとうとする程度の睡眠しかとれず、目を覚ました時には到着三十分ほど前だった。後始末を手伝いに宴会車両にいくと、既に綺麗になっていた。申し訳ない。しかしゴミ袋が「萌える」「萌えない」の区別とは。
 ホテルの送迎バスに乗って会場に到着。今回は宿貸し切りの合宿大会だ。合宿形式は、途切れることなく続くお祭り感と、深夜独特の高揚感があって楽しい。
 とはいえ、着いた直後は昨夜の疲れの方が勝っていた。またロビーのソファの座り心地が凶悪にいい。
 睡魔は最強。後で顔見知りの方に「寝てたから夜行で来たとわかった」と言われました。ええ年したおばさんがホテルのロビーで寝くたれることについての苦言は却下。
 
 受付時間になったので手続きをし、部屋に荷物を置いてオープニングが始まるまでは同室の方と名刺・シール交換をしてみたり企画の計画をたてたりホテル探険(いくつになってもやります。必須装備)をしてみたりまったりと。今回もまた、企画スケジュールはプログラムブックとは別に最終版があった。のはいいが、表面が滑らかな紙に吸い込みが悪いインクで刷られていて、こすると消える。昔の学習雑誌付録スパイ手帳を思い出してしまった。
 オープニング会場である公民館(……)は、道路をはさんでホテルの真向かいにあった。だがなまじ近くに信号があるため、遠回りをさせられる。まあ大人としては当たり前の行為なんだが。
 バリアフリー思想をあとからとってつけた印象の入り口からはいる。普段家庭婦人バレーボールが行われていそうな空間に並んだパイプ椅子と、舞台の重々しい、いかにも緞帳らしい柄の緞帳が何ともいえない雰囲気を醸し出していた。地方の町立公民館なんてあればいいほうだしな。うん。
 閑話休題。ずんだ(枝豆)のはりぼてからから出てきての実行委員長御挨拶。司会は去年とおなじおねえさんだ。委員会側に不手際があってもうまくフォローしてくれている。また、近くにある石森萬画館の館長さんと職員さんは、009風の特製法被と、003のコスチュームでご登場。SF大会ですな。開催の宣言を聞くと一気に気分が盛り上がるのも毎年のこと。
 ほしたらいこか。
 
 最初は「やおいパネルディスカッション」。
 今年は男性同性愛者向け雑誌に掲載されている漫画の話があった。どうも作者の方がバロウズやトールキンが趣味らしい。男性の同性愛雑誌で、傾向としてはマッチョ向けらしいので絵柄もそれなりだそうだ。それで60年代から70年代の少女漫画風展開。……
はて。
 で、本家の少女漫画の方はと言えば、最近近親相姦やアブノーマルものが増えているそうだ。小○館系かな。だがその価値観は純愛で、つまりボーイズラブの手法をそのままヘテロセックスに持ち込んでいる。ボーイズラブの手法というのか、どこか根源の部分が受け入れられているということなのか?
 あとは某誌に掲載されていた、一般が見たいわゆる「腐女子」についての本が話題に上っていた。大会終了後読んでみたが、確かにかなりバイアスがかかっているような気がした。普通オタク女は、某誌読者が想定するところの結婚相手には向かないと思われます。
 海外の状況にも触れられていた。インターネットが発達する前は、元原稿を送り、それをコピーして返却すると言う方式で通販がされていたらしい。そのネットワークがアパルトヘイト時代の南アフリカや社会主義政権崩壊前のポーランドにまで及んでいたとかなんとか。記憶にないが、そのスラッシュの元ネタは何だろう。もしかしてスタートレックですか。あの「アメリカ保守中流世界観」の。それのパロディが社会主義ポーランドに流れていたわけですか。うわい。
 テキストも入手していないし、途中からだけど行くだけ行ってみるかと「SF創作講座」。矢張りわからなかった。ただ、プロの人が持つ意見は情け容赦なくシビアだということ。この場所で耳にしたか、違う場所でだったか記憶があやふやだが
「陳腐な文を書いた当人は、それを名文だと思っている(大意)」
いだだだだ。
 星雲賞授賞式は再び公民館で。既にあちこちで発表されているので結果は割愛。今回の副賞は、宮城特産の硯でした。いいけどこれ海外部門の受賞者の方どうするんだろう。コミック部門で受賞した「陰陽師」の岡野玲子氏が来場していらした。コミック部門の漫画家さんはいらっしゃらないことが多いので少し驚く。
 ホテルに帰って、星雲賞受賞パーティ兼夕食。いつものバイキング形式。今回は量的にはゆとりがあったようだ。それでも某大会での教訓に従って、まずは腹持ちのいい御飯ものを確保した。お刺身は早々となくなった。テーブルでシール交換したりお話をしたりしていると、フルーツの飾り切り盛り合わせを一皿まるごととってきて、テーブルに置いてくださった方がいた。果物は私の主要熱量摂取源であるのでありがたくいただくが、苦笑を浮かべてしまう。
 昔よりは食料の減少速度がゆるくなったそうだが、それでも普通の立食パーティよりは数段上だと思う。
 食事が一段落ついたところで、シールや名刺を入れているポーチの中身を整理するためテーブルから離れて壁際に行く。と実行委員長がいらしたので少しお話してシール交換。お疲れ様です。食事は採れているとおっしゃていたが、大変であることには変わりないだろう。お疲れ様ですほんとに。
 さて食欲充たしたら次は物欲。ディーラーズルーム襲撃。大都市圏開催と比べると、やはり規模が小さい。まあそれは仕方のないこと。翌週のオフ会のネタにするべく、ガンダム名台詞かるたを購入した。後日たいそううけました。
 前夜が列車の中でごろ寝であったので、この夜はお風呂が欠かせない。宿が温泉であるので楽しみにもしていた。ほくほくと浴室に向かう。
 露天風呂があったのでそちらを選択した。長時間浸かっていてものぼせないのが好きだ。細い竹で編んだらしい衝立の向こうは男風呂らしく、話し声が聞こえてくる。先に入っていた方々に目で挨拶をしてから入った。脚ををのばせる湯船はいい。
 向こうは男湯なんですねー→大丈夫見えないような構造になってるから→そういや何か向こう静かになっていませんか→ここはやはり少年雑誌のラブコメにしか出てこない会話をするべきか→妄想といえばメイド喫茶→執事喫茶行ってみた→ほほうそれでどのような
 という会話の流れで、思ったよりも長湯してしまった。頃合いをみて上がり、目的だった企画に急いだ。
 「ロマンスSFの部屋」ハーレ○インと似たようなもので、SFやファンタジイ風の味付けがしてある作品を紹介する企画だった。以前もハーレ○インのSF系レーベルが紹介されていたが、原書だったのに対して今年は和書。結構出版されているようだ。ファンタジイブームのせいだろうか。恋愛ものを書くとき、SFやファンタジイ仕立てにすると絶対的な障害が作りやすいので、ドラマ性をつけるのに苦労しないという利点がある。ただその絶対的な障害を作るための作業が難儀なのだが。まあ恋愛ものを主眼にしている作者や読者はさして気にしないだろう。
 「ラノベ作家対談」ライトノベルで書いている方の多作ぶり、そのスケジュール管理の緻密さに驚く。職業として書いていらっしゃる方ならどなたでもそうなのかもしれないが。
印象に残ったこととしては、「剣客商売」がライトノベルの手法で書かれているという見解があげられる。読んでおらず、テレビドラマになっているものをちらりとみただけだ。そもそもライトノベルの手法というものをはっきりと把握していないのでなにも言えないが、エンターテインメントならある程度似通ってくるということか。
 ライトノベルのレーベルで多いのが、ゲームなどのノベライズである。この場合、キャラクターの気心が知れず、勝手に動かせないという意見が出ていた。これはとてもよくわかる。こういう状況でこの登場人物はこう動く、ということが把握できずに書けはしない。また、規制をくわえられるのもとてもやっかいだ。それをクリアするのは技術の問題なのか。
 なお帰宅後、同人創作短編小説の執筆者募集告知があったので見てみた。テーマの制限がある。ヒーローとヒロインが炎と闇で、髪が赤と青、片方がショートでもう一方がロング、職業は僧侶で……無理。書けたとしてもたぶんひとりだけ浮きまくっているだろう。
 最近の傾向としては、以前よくあった世界の存亡に関わる謎や闘いなどを主軸にしたスケールが大きい作品は読者に好まれず、主人公、つまり感情移入する読者の身の周りの範囲内での物語がよく読まれるそうだ。ただ単にその類の物語が飽きられているだけなのか、他の遠因があるのか。
 もとの職業なので「本屋パネル」に行く。古傷がたいそう痛みました。ううう。出版社の方も既に書店が文化的な場所だなどと思ってらっしゃいません。現実を見て動きましょう。まあ何処でも地方の書店はもの悲しいということで。日本でもどこの国でも。アメリカ式の「ブッククラブ(?)」というシステムについての談話。つまり会員になれば、一定数の本が送られてきて、うち気に入ったのものだけを買って後は返品というものらしい。日本人の返品にたいする抵抗感から無理だろうという話に落ち着いたが、やってみたらよさそうな気もする。だって最近の高校生ぐらいの子達の態度から察するに。そういう子達と、書籍を積極的に読もうとする子達との間には溝があるとも思えるんだけどね。あらこんなところにも格差社会(違う)。
 
 午前三時も過ぎ、ルームパーティナンパもなく、情報も仕入れられなかったので大人しく寝部屋に戻ってお休みなさい。朝にひと風呂浴びられるといいなと思いながら空いている布団にはいった。
 
 同室の方にご迷惑なので目覚ましはかけなかった。どなたかが帰っていらした物音で目が覚める。
「すみません今何時かわかりますか」
「八時ですよ」
朝食は九時までだ。朝風呂に行っていたら御飯を食べ損ねる。急いで身支度をし、朝食会場にむかった。
 和洋折衷の、よくあるバイキングだが、和食の方には宮城の名物が並んでいた。少し心引かれたが、朝食で好みから外れると一日影響するので諦めた。しかしSF者は朝っぱらからよく食べるなあ。
 
 荷物を、広間にしつらえられたクロークに預けてクロージングのため再び公民館へ。
 いつもどおり各賞発表。
 暗黒星雲賞は案の定タイムテーブルが二部門制覇した。実行委員長さんは「あの紙は」としみじみ話され、もうお一方は「悪かったねっ」のひとことですまされていた。そしてやっぱり司会のおねえさんも受賞。とってもうれしくなさそうでした。別部門の時もたついたけれども「手伝いませんからね」と突き放していた。それも演出と言えば演出なんだが、どこまで恣意的なんだか本音なんだか。
 センスオブジェンダー賞、今年は割烹着で登場。ジャパニーズメイドスタイルだそうです。受賞は「沼地のある森をぬけて」沼→ぬかみそ→割烹着だそうです。読んでみたくなるなあ。
 そして毎年お楽しみのシール企画、今年の煩悩王は初代様でした。たいそうどうでもよろしいが、最初の時はちっこい男の子だったのに立派な少年になって・・・。声変わりまですませていて驚かされた。後日ずんこんについて検索してみたら、親御さんのブログをみつけた。今年は企画中心に参加されたとか。あの、お節介ですが、本当にお子さんがそんなふうに成長されてよろしいんですか・・・?
 そして来年への引継、スタッフ方やジェンダーSF研の皆様が「赤いマフラー〜」と歌いながら赤いスカーフを振ってエンディング。お疲れさまでした。
 
 家庭内事情によりとんぼ帰り。少しさみしかったものの、駅までのバスの中で楽しく歓談できました。ありがとうございます。お昼もお誘いいただいたのですが……ちぇ。
 
 さて来年はワールドコンです。どうなることやら。楽しみ楽しみ。
 
 
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