まずは毎年の言葉から。
 この文章に資料的価値はいっさいございません。ただのSF大会参加した自慢としてお読み下さい。

 今年は諸般の事情により参加が危ぶまれたが、とにもかくにも無事(?)参加。猫に一晩の留守居をよくよく
言い含めて、年に一度のお祭りに出発です。

 難波駅から南海電鉄を利用する。この鉄道会社の利用は初めてだ。時間が少々不安だったので、関西空港行き
の特急を利用した。海外旅行に出発する人が利用することを前提にしている列車なので、スーツケースを置く
スペースがあったり、前列の座席の背にあるポケットに関西空港の冊子があったりする。
 普段乗らない列車を使うと、それだけで「旅に出る」気になる。(念のために申し上げておきますが私は「鉄」
ではありません)

 今年の開催地は、大阪の岸和田。だんじりで有名なところだ。祭が近いからか、道の両脇に提灯が飾られてい
た。そろいのTシャツを着た人達も歩いている。それを除けば、地方都市によくある商店街だ。軽自動車ならば
すれ違えるかもしれない程度の幅をした道の両脇に個人商店が並んでいる。ここであのとんでもない(褒め言葉
です)祭が執り行われるとは、言われなければわからないだろう。
 そんなことを考えながら歩いていると、いきなり大きな建物があった。今回の会場、波切ホールだ。デパート
やアミューズメント施設も隣接していて、おされな若者達の集まるような場所である。ふた昔ほど前の雰囲気が
漂う商店街から、小綺麗で生活感のないショッピングゾーンに切り替わるとややとまどう。だがしかし、ちょっ
としたお社もあるあたりが流石にあれでそれでなに。
 とにかく、まずするべきことは受付。事前に申し込みをした参加者と、当日登録の参加者で別れて並んでいる。
何か当日参加者が多いようなと思いつつ、多少待ったが受け付け手続きはすんなりと終わった。今年はオープニ
ングの映像が凝ってるらしいんだよね、と期待しながら開会式がおこなわれるホールで席に着いた。配布物の中
身チェックや、交換用シールなど頻繁に出し入れする物の位置を鞄の中で入れ替えたりしながら待つ。
 やや遅れるとの放送が入った。よくあることさねと流してそのまま待つ。後ほど知ったのだが、当日受付の
数がかなり多く、そのため遅れたらしい。大会前日に新聞に載ったそうなので、そのせいもあるだろう。しかし
たまたま見たからといって、行こうかと思うとは、その記事はどういう内容だったのだろうか……。

 さて開会式。オープニング映像は、女性型ロボットが敵と戦う特撮もので、会場にやってこようとするところ
で終わって、そのままオープニングにという演出だった。プログレスレポートに掲載されていた場面がなかった
が、オープニングで流されたのは短時間バージョンで、長いものはディーラーズルームなどで販売するという方
式だった。
 小松左京氏がいらっしゃる予定が、体調の都合でビデオでの挨拶になっていた。今年は色々あった。ご回復を
お祈りする。岸和田市長はだんじりについてとうとうと述べていらした。大会のことを「文化的な〜」とお
っしゃったところで会場から苦笑がもれた。うん、まあ、ね。
 そのほかダイコン社ロボットの人類三原則(「人類は(この大会を?)楽しまなくてはならない」など)や
大会での諸注意が発表された。


 さて、今年も本番です。

 まずは「まるいち開発室」。家庭雑事一般向け行動トレース型ロボット「まるいち」をめぐる諸処を描いた
コミック「まるいち的風景」についての企画。実際に売り出されているロボット(行動トレースは出来ません)
にまるいちの着ぐるみを着せてあるものがおかれていた。うわあ可愛い。作者さんのトーク企画かと思っていた
が、塗り絵などの参加タイプだった。ちょっと苦手かなと思ったので、頃合いを見て退出。

 同じ4階でおこなわれていた「大阪国際児童文学館の収蔵物を語る」に、何気なく入ってみた。そしたらまあ。
 収蔵物例:日本でのグリム童話初版。明治期のヴェルヌ。学研の「科学・学習」、小学館の「小学○年生」双
方のふろく。電撃hp。ファミ通。ぱふ。
 それらを年代別に分けて、版が異なれば異本と見なし、雑誌類は傷が付かないようまとめて綴じずに保存して
ある。一般的な図書館とは違い、カバーや帯、挟み込みのちらし、スリップ(書店で、会計の時にレジの人が本
から抜き取る細長いあれ)までもを一緒につけている。「文学」的価値のないものも保管されている。例えば戦
後間もない時代の紙芝居で、亀の形をした頭の騎士が主人公を助けに来るといったものもあるらしい。余談だが 、
古い紙芝居の上演などには、いまだにその発行元の許可がいるそうだ。
 貴重な本の書影が画面に映されるたびに、参加者さん達から悲鳴にも似た声が上がっていた。
 正直私も、「いわゆる「児童文学」が集めてある図書館でしょ」ぐらいの認識しかなかった。だが、ここは
研究もかなり充実していて、図書館のように本が傷んだら廃棄処分されるということもない。
 しかし、某知事のもと、閉鎖して蔵書は各図書館に譲られる計画が進んでいるそうだ。大阪の皆さん反対運動
を……。と書いていたら、9/8付けの新聞に、「隠し撮りしたビデオからは改善努力のあとがうかがえない」
という記事が掲載されていた。あああ。

 次の時間帯は特に興味のある企画がなかったので、ディーラーズルームをひやかしにいった。ミクシィの同じ
コミュニティに入っているサークルさんがいらしたのでご挨拶したり。今年はなるべく交流しようと思っていた
ので、意識的にいろいろな方に話しかけていた。ここで申し上げても仕方ないが、度が過ぎてしつこくしてしま
った方々すみませんでした……。

 それでも時間が余ったので、「理系BAR Fermi Laboratory」に足を向けた。ちょっとした飲み物やゼリーなど
の軽食を、飲み物ならばビーカーや試験管、ゼリーならシャーレに入れたりして出してくれ、化学実験ショーも
する場所。せっかくなので、昼間ではあるがアルコールものを頼んでみた。リキュールベースのカクテルで、名
前は「digital Lv.1」。「コンピューター等で使われる二進数の明快さ」を表現したそうだ。柑橘系ベースで
飲みやすかった。ちなみにプラスチックの計量容器で供されました。こんなの。

 通りすがりの人とシール交換などしているうちに、次の企画が始まる時間になったので目的の部屋に行った。
はい「やおいパネルディスカッション」です。始まる直前に、どうみても小学1,2年よりは年齢いってないだ
ろう男の子が紛れ込んできたのでぎょっとした。幸い始まる前に出て行った。やれやれ。
 今年は雑誌Juneの編集部の方もいらしていた。パネラーには男性が二人含まれていた。お二方共が書き手。
うわい。というわけで、主に雑誌Juneについてのお話だった。私読んだことないです。
  「Juneに男性が十年書き続けるのは、真っ暗闇に石投げてるようなもの」だそうです。それくらい異質である
という話。  BLとJuneとの違い。何のことやら、と思ったが、BLは文字通り「ボーイズ・ラブ」で愛情があるかどうかが
問題。Juneは愛情があってもなくても可、主人公の魂の救済などが主、らしい。ええとつまりファンタジーのキ
ャラクター中心派と世界設定重視派のようなものですか?今まではBLが強かったけれども、最近はJune的な
ものへの揺り返しが来ているそうだ。それはそれで興味深い。
 あと「何ですかそれ」と思ったのが、Juneに「なんじょうたけのり」という名前の方から投稿があったらしい
こと。イギリスの司祭と助祭のきよらかものだった……そうです。ええと次いこう次。

 色々腹抱えて笑ったあとは、「テルミン・ライブ」。あのふよふよとした音色が好きだ。トルコの軍楽
の演奏だった。ギターとの合奏で、わりにテンポの速い激しい曲調でしたが、不思議に合っていた。

 時間の関係で中座して合宿企画に。近くにあるスーパー銭湯でおこなわれた。あの手の銭湯の利用は初めて。
どんな感じかと思いながら受付をした。靴を預けるのはいいが、スリッパがない。うぉーたーぷらんつとか大丈
夫かねという心配が頭をよぎる。スリッパの方がかえって蒸れたり不潔だったりするのかもしれないが。
宴会が始まるまでに時間があり、またロッカーがお風呂の脱衣場にしかないので、一風呂浴びに行った。
 お風呂は、大規模温泉旅館のものと似たような作りで、浴槽の種類がいくつかあった。岩盤浴などもある。泳
げるプールがあるのは家族向け故か。露天風呂にいったが、雷が見えたので早々に引き上げる。いやまあ一応
念のため。マッサージにかなり惹かれたのだが、時間もあるので断念した。
 早めにあがって、温泉着(というのか、銭湯で貸し出している楽な服)に着替えて宴会場に戻った。ディーラ
ーズルームで会った、同じコミュニティの人と出会う。こういう偶然は嬉しい。
 本会場の企画と時間が重なっていたせいかある程度の人数がそろうのに時間がかかり、宴会は少し遅れて始ま
った。わあい他人が作った料理。夏にある程度涼しくした部屋で食べる鍋って贅沢。周囲の方から、この前の日
曜日に開催された同人誌江戸湾岸大市についての話を聞いたりと、久しぶりに「オタク」の会話をして楽しい時
間を過ごすことが出来た。
 夕食を兼ねた宴会が終わると、いったん部屋を移って夜更けまでの飲み会になる。その準備のあいだに、もう
一度お風呂に入りにいった。複数回入らずして何の大浴場か。
 誰か相手がいる状況での夜更かしも本当に久しぶりだった。大広間の大型モニターに映る自主制作特撮映画
(特撮制作会社にお勤めの方が作った自主制作。画像綺麗でした)を見ながらのとりとめのない会話とか。
私生活で色々あったのでいい気分転換になった。
  夜も更けて眠くなったが、カプセルルームを取り損ねたので広間で雑魚寝だった。これはこれで、子供の頃の
学校行事を思い出して楽しい。
 そして朝に目を覚ますと、まぐろが並んだ魚河岸のような光景が。「ソイレント・グリーン」を連想する。
朝風呂に入り、お片付けを手伝って、さて二日目です。

 手話とか、そういう架空ボディランゲージコミュニケーションについての話かしらと思っていったら格闘技の
お話だった「SFにおける肉体言語について」。すみません眠気が勝ちました。メモに残っていることで興味
深かった話としては、よくテレビ等で見かける、拳で自然石を割るパフォーマンスは、素人でも一時間ぐらい
あれば出来るようになるということがあった。ほう。また、合気道や空手はもともと対武器だったとか。格闘技
に興味のある方が出れば面白い企画であったと思います。

 気を取り直して「宇宙作家A.C.クラークを語る」。今年は訃報ばっかりでしたね。
 パネリストの方々がそれぞれのクラーク観を語られた。静止衛星のアイデアを提唱するなどの側面からか、
手を動かすエンジニアというような意見だった。しかしその一方で、間口は広いが保守的なイギリス人という
意見もある。「世界政府を信じていた」や、「宗教に対しては嫌悪感を持っていた」は、なるほどと思った。
 その「宗教に対する嫌悪感」から話が転がった。「宇宙人が来て宗教人を論破し、そして宗教が滅ぶ」という
のは素朴さが過ぎないか、といったものや、クラークの描く超知性体は西洋のGodではないか、また、人類が発展
してより高次の存在になるといった思考は、キリスト教における、死の後天に行ってより高いものになるという
教えに近くないか、など。オカルトにかなり傾倒していたのは事実らしい。
 なお、これら宗教観についての議論の間、某パネリストの方が「なんだかなあ」というような表情をしておら
れたのがとてもらしいなあと。
 クラークと言えば「2001年」。HALとのチェスのシーンや、HALが絵の評価をする場面は、当時の人工知能
研究の手法を取り入れているのではないか、との意見もあった。
 私としては、クラークと宗教観という思わぬ題材が楽しめた。

 もうひとつの訃報関連、「野田昌宏企画 SFは人生だね」。原画のオークション、上限が設けてあったのが
面白かった。だが苦情があったらしく、その上限よりも余ったぶんは大元帥の葬儀が行われた教会に寄付、とい
う形になっていた。大元帥、クリスチャンでいらしたのか……。
 菅 浩江氏による「シャンブロウ」の朗読、高千穂遥氏や加藤直之氏、親交のあった方々によるお話などだっ
たが、全体的に明るい雰囲気だった。どなたの発言か記憶もメモもないが、「プロデューサー人生だった」
との言葉が印象に残った。また、頼まれればどんな地方のコンベンションにも出向かれたそうだ。
 後半はNASAの記録映像だった。かなり以前のものらしく、ドラム状の紙に、計器と連動した筆記具で記録が
とられていた。叩いたら直りそうな機械はかわいらしい。
 「こういうの、野田さん好きそうですね(不正確)」とのコメントもまた印象に残っている。

 さて今年ももう終わりか、と思いながら閉会式の会場のホールに向かう。舞台で、細長い風船を縛って形を
作ったりするパフォーマンスがおこなわれていた。プログラムにはないが、ああ何か変更されたかな、と思い
眺めていた。
 そうこうするうちに、暗黒星雲賞の発表が始まった。先刻のパフォーマンスは、開始遅れの場持たせであった
と判明した。暗黒星雲賞、今年の賞品は直径8センチのたこ焼きがふたつ作れるたこ焼き器。なんでそんなもん
が存在するですか。受賞結果のうち、面白かったのは「異常に長い階段」でした。会場関係者さんの「我々も
普段使っていない(大意)」というコメントに笑いが漏れていました。対非常時の問題だろうけれども、使わな
いようなものを何故作りますか。
 星雲賞の受賞結果につきましては、既にあちらこちらで触れられていると思いますので割愛。コミック部門で
浦沢直樹氏自身がいらしたのには驚いた。SFには思い入れがおありだそうで、そのためかと。特別賞に野田
大元帥。「銀河乞食軍団」の新作で受賞していただきたかったです。

 そんなこんなで閉会式も無事終了し、来年の申し込みをして帰宅の途に。途中のおみやげ屋さんで、「さっき
から異様に売れるんだけど何があった」との声を耳にした。そしてそれに対して丁寧に答えている参加者さん発見。
 また、来年。スタッフの皆様ありがとうございました。

SFコンベンションその他外出記