自分にはっぱをかけるために、今書いてるものの冒頭部分をさらしてみる。興味を持たれたなら「とっとと書け」
と掲示板なりメールなりで言ってやってください。



 人影が、ない。これといった建物もなく、目に入ってくるのは色彩と起伏双方ともに乏しい荒野だ。空もまた、
僅かに青みがかった灰色の雲に覆われている。ひとの気分を浮き立たせるものではけっしてない。遠い南方の都、
ビュザスに住む人間達は、この土地を「テュレ」世界の果て、と呼ぶ。納得できる。あまりに寂寞としている。
弱い者は生き残れない場所だ。
 駆獣がうなって鼻をすりつけてきた。
「ああ、すまない」
知らず足が止まっていた。外出の時は必ず身につけている剣と貴重品を入れた小袋以外の荷物を負わせて、フィ
テラ自身は歩いていた。指示もなしに止まられては、獣の立場では迷惑だろう。
 再び歩き始めたとき、目の前を白いかけらが落ちていった。すぐに地面が白く覆われていく。
「雪、か」
帰って来たのだ、とフィテラは実感した。
 小さな丘の横に来た。天辺に木造の建物がある。木造であること自体が、木の乏しいこの土地では贅沢だ。だ
が、くわえて様々な彩色や彫刻が施されている。フィテラが旅立った当時から改築されていなければそうだ。お
そらく、補修以外の手は加えられていないだろう。神殿をそうやたらといじるはずはない。
 そのまま通り過ぎようとしたが、建物から数人の男が出てきた。今日は何かの行事の日だったか、とフィテラ
は駆獣の装具を、止まれ、と引いた。丘の下からではよく見えない。
 何にせよ、フィテラは帰郷の挨拶をしにいくことにした。一族や、護集人は皆集まっているだろう。聖域内で
の武装は禁じられている。背負った剣を外して獣の背に乗せ、神殿の建物にむかった。各自の顔が判別できるほ
どに近づくと、一人の男が気づいたらしく、じっとフィテラを眺めた。フィテラは記憶を探った。確か、血縁の
者だ。自分から頭を下げる。
「お久しぶりです。キャルタンの息子、フィテラにございます」
「……ああ。見違えたな。無事に帰って来られて何より。キャルタン・ドゥロートナル」
 父が、道を譲られて姿をあらわした。
 年老いた。皺がいくぶん深くなり、身体全体が細くなったような気がする。義母による丹念な刺繍が見事な礼
装は、それほどゆったりと仕立てられてはいなかったはずだ。
 それらの事実を何の感慨もなく受け止めている自分にわき起こった笑いをこらえ、フィテラは深く礼をした。
「ただ今帰郷いたしました。かわらぬ様子を拝見できましたこと、深く安堵しております」
「再びまみえられたこと、我らが守護神に感謝せずばなるまい。しかも冬押さえの日とは。これより宴だ。方々
に南のことなど語って差し上げるとよい」
 神殿の中で生贄の血を垂らした燃泥を燃やし、その灰を各々の家に分ける儀式であったらしい。冬の始まりの
大切な儀式で、各戸の長が出席する。財産相続権のない庶子であるフィテラが出席することはない行事であると
はいえ、忘れていたとは、自分は自覚している以上に南方に馴染んでいたようだ。



 こんな感じです。どっかで聞いた名前などが出ていますがとりあえず関係はありません。ファンタジー結界
を張っていますので、「こんな儀式あるかい」とか言わないでやってください。
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