現在の庫裏は大正13年(1924)に完工した。 但し、その再建工事中の大正12年9月に発生した関東大震災で物価が急騰したため、二階部分はほとんど手をつけぬままの状態で工事は終了した。そしてやっと、昭和55年(1980)になって、二階部分が完成した。

 この庫裏は、特に二階建て部分の一階は10畳六間、二階は8畳六間で、建具の襖を取り去ると、それぞれ60畳、48畳の大広間になり、それらの大広間は周り廊下で囲まれ、内部には柱二本のみがあり、壁のほとんどない構造になっている。

 そのためか、ちょっとした地震や台風、季節風にもよく揺れる軟弱な建物であった。その上、当山には、宝永4年(1707)の大地震で当時の庫裏が倒壊したという記録もあることから、この庫裏の地震対策が急務でもあった。

 そこで、平成17年10月3日から11月26日にかけて、それまでの独立基礎をコンクリート基礎で結ぶなどして基礎を増設し、庫裏の使用に著しくは影響のないところに筋交い入りの壁を増設し、さらには揺れ止め金具を取り付けるなど、以下の耐震補強工事が進められた。
また、追加工事として18年4月26日、筋交いの入らない古い真壁を、壁を取り壊すことなく、容易に取り付けの可能な金属を用いて補強する工事がなされた。この方法は一般住宅にも有効なもので、お勧めいたします。

耐震補強工事内容
 工事:火打ち金具取り付け 36本、 鉄筋基礎増設 6箇所、筋交い入り壁増設 13箇所、梁への羽子板金具増設 4本
 追加工事:7面の真壁を、各壁の柱間に金棒をX型に設置して、補強した詳細はこちらへ

施工 松阪市 大藪建設 棟梁 大藪勇

基礎、筋交い入り壁増設工事

追加工事


固定用金具、ターンバックル、金棒
追加工事 固定用金具(上の写真の中央):柱の上下両端に2枚の鉄板(厚み6mm)で出来た固定用金具を設置。この鉄板の1枚は壁から出ている柱を包むためにコの字型になっており、柱固定用のねじくぎ(13mm)用の穴5個を持つ。もう1枚(7本穴は250x280mm)は、柱間を結ぶ鉄棒のためのビス(16mm)用の穴2ないし1個と、柱固定用のねじくぎ用穴5本を持つ。この2枚の鉄板は溶接され一体となっている。
鉄棒(写真上部2本):鉄棒(直径16mm)は一端は右ないし左ネジ用溝が掘られており、他端は固定用金具に取り付けるための羽子板金具となっており、ビス穴付の鉄板(厚み9mm)が溶接されている。
取り付け:1つの柱の上端に取り付けた固定用金具と隣の柱の下端のそれを、市販のPS式ターンバックル(全長250mm)で繋がった鉄棒を用いて結び、ターンバックルを回して引っ張って固定した。

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宝永地震 宝永4年10月4日(1707年10月28日)に発生した我国における最大級の地震であり、今日で言う東海、東南海、南海地震の各マグニチュード8.4の地震が同時に発生したと推定されている。しかしながら当山の過去帳を見る限り、当地では死亡者が多数出る程の人的災害には至らなかったようである。但し、これは当時は瓦葺、二階建ての住居はほとんどなかったためでもあろうと思われる。

(平成18年6月記入)

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