| 響き渡った硬い音 その行方を確かめたとき、確かに心臓が止まったのを感じた。 残像(3,4)=edward side= 鮮烈な蒼い残像 それは弧を描くように一瞬宙に浮き、そして呆気なく倒れた。 意思のあるものとは思えない動きをして。 「大佐、大佐―!!!」 夢中で駆け寄った先には、男が一人倒れている。 頭部から滴る、赤い血溜り。 生々しい匂いを漂わせるそれに、狂おしいほどの恐怖を覚える。 仰向けの青白い顔は、反応を返さなかった。 「目を開けろよ、クソ大佐!!!」 苦しい、息が出来ない。 名前を呼ぶことしか出来ない。 「大佐…!」 ―大佐が、撃たれた。 俺を庇って。 撃たれて、 血が。 撃たれて血が、たくさん― ぐるぐると、およそ意味をなさない思考ばかりが回り続ける。 「エド、ワード…?」 ややあって、搾り出すような声が聞こえた。 いつもの低く、そして甘い響きとはまるで似つかわしくないその潰れた音に 突然、耐え切れないほどの感情が湧き上る。 そうだ。 これは怒りだ。 心臓を焦がすほどの激情に、エドワードは振り絞るように叫んだ。 「馬鹿野郎!!ふざけるな!なんで、アンタ、アンタは…!!」 ―どうしてそんな情けない声を出している。 ―どうして、俺なんか庇ったんだ。 ―どうして。 どうして、アンタはここで、こんなところで 今にも止まりそうな、浅い息を繰り返している? 聞こえたのか聞こえなかったのか ロイの唇が微かに動いた。 「鋼の、君は、無事か…?」 「ああ、アンタが余計なことしてくれたお陰でな!!」 酷く聞き取りにくいそれのため、エドワードは耳を近づけ地面に跪く。 一言一句聞き逃さないように 彼の声を。 「なんだよ、潰れた蛙みたいな声だしやがって!もっとキリキリ喋れよいつもみたいに!!」 意に反して声が震えた。 普段の気取った風など微塵も無い、情けない様を笑ってやるつもりなのに。 いつも優しい声音で自分を惑わせ、嫌味なほど余裕たっぷりなロイの声。 どうしてだろう、今はそれが聞きたい。 こんなか細い声など聞きたくない。 こんな、今にも消え入りそうな声は― 呼吸をする間にも、ロイの顔は白くなっていく。 吐く息はさらに浅く 生臭い臭気も濃くなってきた。 漂う鉄のにおい ここから命が零れている。 「…大佐!死ぬなよ!大佐、たいさー!!!」 苦しい。息が出来ない。 熱い固まりがぐるぐると胃の腑を回り続け、 止まらない思考に気が狂いそうだ。 こんなところでアンタは死んでしまうの? どうして俺はまた、何も出来ない? 鈍く視界が霞む 噴出した熱い液体が、幾度も頬を伝うのを感じた。 止まらないそれがロイの頬をぬらす。 閉じられた瞼はそのままに、その身体はぴくりとも動かない。 「大佐…!」 やめて 連れて行かないで まだ言ってない。 伝えてない。 アンタはこうやって いつだって、俺の言うことを聴こうとしないんだ。 零れ落ちる温い水 耳を叩いた、甘い声 「君を、愛してる」 そう聞こえたのは幻だろうか? NEXT |
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04/11/08
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