「騎士よ、このおぞましき湖を眺めるそなたがどこの誰であれ、もしこの黒々とした湖の底に秘められた宝を手に入れたいと思うなら、そなたの胸の凛呼たる勇をふるいて、この熱く沸きたつ黒き波間に身を躍らせたまえ」  セルバンテス著「ドン・キホーテ」
 
北海道の湖沼を訪ねて 2 道北・道東編
 
 朱鞠内湖。パンケ沼。ペンケ沼。オタトマリ沼。姫沼。クッチャロ湖。ホロカヤントウ沼。湧洞湖。長節湖。春採湖。床潭沼。温根沼。風蓮湖。知床五湖。涛沸湖。
 
 十勝の太平洋側や根室海峡沿い、オホーツク海側に並ぶ湖はほとんどが海跡湖。その海跡湖へは河川が生物の生長に欠かせない有機物を運び込む。そして海と繋がっていた湖は濃度の差こそあれ海水が入り込み豊潤な栄養素を溜め込む。そして海は季節になれば鮭・鱒が押し寄せ、またその他魚貝が溢れ海獣も多い。まさに食料の宝庫。砂丘は春いっせいに花を咲かせオホーツク人は生活を謳歌した。湖沼を訪ねるとともにその地の先住民族を知るために博物館、郷土資料館等も訪れたい。
 

北海道の湖沼を訪ねて 2
この「北海道の湖沼には人造湖はいれないでおこう」と考えていたがただ一つ「朱鞠内湖」は入れることにした。

北海道を滞在しながらの湖沼めぐり。特別な計画を立てたのではないし、インターネットなるものを知らなかったからまさかホームページを作るとは夢にも思わなかった。したがって春、夏、秋、冬といろいろな画像がある。それがかえって僕には楽しい。では「北海道の湖沼を訪ねて 弐 道北・道東編」をどうぞ。

朱鞠内湖 道央 雨竜郡幌加内町
 朱鞠内湖は人造湖であるからこの「北海道の湖沼を訪ねて」に入れるべきではない。それを敢えて入れたのはこの湖でたくさんの若者と話をし、また別れた特別な思いがあるからだ。ここを訪れたのは8月13・14日のお盆の時期で、かってのライダーのメッカだった開陽台のように若者が集まっていた。夜語り合った。盆休みを利用してのツーリングで残された日を数えながら稚内まで行きそこからオロロンラインを小樽まで走りフェリーで帰る若者が多かった。互いに手を振りつつ別れた若者を思うと今でも涙が出そうになり、なぜか和田アキ子が歌っていた「コーラスガール」が口を出る。朱鞠内湖は日本最大の人造湖。大小13の島がある。
パンケ沼 道北 天塩郡幌延町 日本の重要湿地
ペンケ沼 道北 天塩郡幌延町 天塩郡豊富町 日本の重要湿地
 天塩川の支流サロベツ川の東側に南北に二つの沼が並んでいる。パンケ・トーは下流の沼で幌延町にあり、ペンケ・トーは上流の沼で幌延町と豊富町にまたがっている。このパンケ沼とペンケ沼のある下サロベツ原野を訪れたのは夏の7月20日だったが小雨まじりの風が吹きその寒かったこと。夜は幌延ビジターセンターの駐車場でP泊。トイレのついている車の有り難さを感じた。朝起きて近くの塔から沼を一望。サロベツ原野は笹の勢いが強く湿原が破壊されてきていると説明板があった。
オタドマリ沼 道北 利尻郡利尻富士町 日本の重要湿地
 松浦武四郎は利尻島と礼文島へは弘化三年(1846年陽春9月)に渡っているがそれよりも前、寛政十年に渡った武藤勘蔵は「蝦夷日誌」の中へ「此嶋むかしより絶頂迄到たるものなし。先年も最上徳内巡行の時蝦夷人のとゞむるをきかず半腹まで登りしに、俄かに大雨そゝぐが如く、山崩震動強く、流石の徳内も恐れて下山す。其後たれにても山頂へ登りたるものなし」と記録している。今、この利尻山へ登るためにたくさんの人々が訪れる利尻島のフェリー発着場からもっとも遠い南端ちかくにオタトマリ沼がある。利尻山が美しく湖面に写る沼として人気があるが風でさざ波が立つ日が多い、また独立山の特徴である雲がかかる日が多く撮影の機会に恵まれないそうだ。
姫沼 道北 利尻郡利尻富士町
 稚内からのフェリーが着く利尻島鴛泊港から比較的近いところに原始林に包まれた静かな姫沼があり、沼を一周できる散策路の途中に甘露泉がある。「利尻島を一周するなら時計回りに」と言われるそうだがそれはいかに利尻山を美しく見るかにかかわっているらしい。午前中に利尻山が輝いて見える姫沼やオタトマリ沼を廻り、午後は利尻町の見返台園地などへ行くのがいいからだ。近年、利尻島と礼文島は観光ブームらしいが司馬遼太郎の「オホーツク街道」には「稚内は、オホーツク文化の北端である。厳密には、礼文島とそのとなりの利尻島こそ、この文化の北端で、考古学的にも光芒を放っている」とある。姫沼にもオホーツク人の歴史が隠されているのだろうと思った。
クッチャロ湖 道北 枝幸郡浜頓別町 日本の重要湿地
 「浜頓別町はクッチャロ湖畔にある。北海道にはべつに屈斜路湖があって、いずれもアイヌ語の咽喉ということばだそうだ。クッチャロとは正しくは“湖ののど”というべきところを、湖を外して命名されたものらしい。・・・海が見えなくなると、湖になった。その水辺に白鳥がたくさんいた。・・・湖畔で、白鳥に餌をやっている人がいた。山内昇という1931年うまれの人で・・・余生のすべてをクッチャロ湖の白鳥の世話にささげているというのである。・・・」(司馬遼太郎 オホーツク街道)。夕日が美しいこのラムサール条約登録地の湖に大勢のキャンパーが押し寄せていた。
ホロカヤントウ沼 道東 広尾郡大樹町 日本の重要湿地
 この沼は、山田秀三の「北海道の地名」に「沼の水位が上ると、砂浜の一部が切れて海と繋がる。・・・番所の老人に聞いたら、砂浜の処が切れると海水が入って来て600メートルぐらい奥まで海の波が及ぶという。・・・近くに行かれた方に、ここまで足をのばして観光されるようにおすすめしたい」とある。画像でお分かりのように窪みがあるがこれは北海道指定文化財史跡でおよそ1000年前の擦文期の十勝ホロカヤントー竪穴群のひとつ。「重要なことはオホーツク文化圏の南限界にあたることである。擦文文化期の遺跡は、ホロカヤントー周辺一帯から十勝平野の太平洋岸に沿った地域や内陸部の十勝川の本支流の段丘面などに広く分布している」(北海道の歴史散歩)。たくさんの竪穴遺跡を見たがこれほど整えられた美しい遺跡は始めてであった。晩成温泉から南1キロほどの地にある。
湧洞湖 道東 中川郡豊頃町 日本の重要湿地
 「ユート(沼周一里半)沼口破るゝ時は舟渡しになる。此沼には神霊ありて時々温み、また冷になると。また温泉の沼も云り」(東蝦夷日誌七編)
 十勝平野の太平洋側には海跡湖が並んでいるがその一つ一つに個性がある。湧洞湖は松浦武四郎の記録に「時々温み、また冷になる」とある。上原熊次郎地名考には「ユウトウとは温泉の沼と訳す」とあるらしい。この湖は水上バイク、カヌー等で若者が遊んでいた。
長節湖 道東 中川郡豊頃町 日本の重要湿地
 「チヨブシ(沼有周ニ里)時化の時、沼口破れ舟にて渡す。名義は自ら破る儀なり。チは自ら、ヲブシは破ると云」(東蝦夷日誌七編)
 長節湖と長節浜の間の道路の最奥まで走った。そこに店があった。でかい新鮮な鮭を売っていた。「なぜここで鮭を売っているんですか?」と妻が聞いた。「どこから来たの?」「伊勢松阪からです」「浜へ行っておいで」と言われて見に行ったら、そこで鮭を釣っている人が大勢いた。それを見て妻は「なあに、釣れなかったら、あの店で買っていくの。納得」と。楽しかった長節湖。根室市にも長節湖がある。
春採湖 道東 釧路市
 「ハルトリ(沼廻り十八丁)ベンケトウと言。ハルは黒百合・赤沼蘭・延胡索・山慈姑、其外種々の喰草多き故号しか、ウトルは沼也。・・・爰に城跡あり」(東蝦夷日誌)
 春採湖には緋鮒(ひぶな)が生息している。そして周辺には鶴ヶ岱チャランケチャシコツ(国史跡)、春採台竪穴群(国史跡)がある。春採台にある釧路博物館へ行った。人口およそ20万人の市にこのように充実した博物館があるのには驚いた。
床潭沼 厚岸郡厚岸町
 偶然、床潭沼の横を通った。沼畔に「北海道指定 緋鮒生息地」の看板があったので立ち寄った。少し海から離れているが泥炭海跡沼。周囲に葦などがたくさん生えている。沼水に含まれる酸素量も多く植物性プランクトンも豊富で緋鮒生息には最適沼らしい。緋鮒はフナの突然品種でその出現は1%と少ない。孵化1年後までは黒いが少しずつ緋色になってくる。しばらく水辺を見ていたが泳いでいなかった。それはそうだろう。稀少魚である。
温根沼 道東 根室市 日本の重要湿地
 根室市には二つのおんね沼がある。一つはオンネ沼でもう一つは温根沼。温根沼は国道44号線の温根沼大橋の上からよく見える。「ヲン子トウ 大沼と訳する也。此処の上に沼有。長凡十八九丁,巾十弐、三丁と云り。惣而平山。此処雑樹繁茂す。鱒、鮭、比目魚多きよし」(蝦夷日誌巻壱拾弐)。根室へは何度も行き、あまり人が訪れないノッカマップのチャシコツまでも雪を掻き分けて見に行ったりしたが温根沼はしっかりと見る機会を持っていないのは残念だ。
風蓮湖 道東 根室市 野付郡別海町 日本の重要湿地
 僕は風蓮湖をもって北海道第一の湖とするにやぶさかではない。動植物の豊かさを身をもって感じることができるのが風蓮湖だ。まったく三重県の人間にとって風蓮湖は驚異の世界だがその理由の一つは風蓮湖はあらゆる場所から身近に見、接することができるからかもしれない。根室市春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンター、根室道の駅「白鳥台」、別海町走古丹で白鳥、オオワシ、オジロワシをはじめとする野鳥、凍てついた大地・氷上で遊ぶ何百頭ものエゾシカ、そして豪華絢爛にまた華麗に咲く花々を見た。遂に僕たちは槍昔まで入った。松浦武四郎はこの風蓮湖での和人のアイヌの人たちへの悪行を「蝦夷日誌 一編 巻之拾」に記録している。それによると「フーレン湖は秋ニ至り鮭の上ること漁猟宜敷、年々凡千石目も有るべき由・・・此湖口川口とも張切網を堅く禁じて、アツケシ、子モロ夷人申し合せ」ていたが和人が河口に網を張って鮭を根こそぎ.獲って上らないようにしたためにアイヌの人たちがたいへん困ったのである。
知床五湖 道東 斜里郡斜里町
 知床五湖の近くには知床自然センターがる。北海道へ行って四季このセンターの講座に参加できた喜びを会う人ごとに伝える。知床五湖へも自然センターの方の案内で連れていただいた。見るだけなら案内を頼まなくてもよい。しかし知床の自然を少しでも深く知ろうと考えるなら、ぜひ説明を乞うべきだ。観光シーズンには五湖の入り口で人数が集まり次第案内していただける。ちなみに参加した講座 冬=歩くスキーでフレペの滝へ、歩くスキーで開拓村へ、オジロワシ・オオワシ観察、春=植物観察、夏=夜間動物ウオッチング、秋=サケ・マス自然産卵観察。
涛沸湖 道東 斜里郡斜里町 網走市 日本の重要湿地
 網走市には涛沸湖、藻琴湖、網走湖、能取湖がある。人とこの湖について話をするときは「小清水原生花園が横にあるあの湖さ」と語ると話が早い。この湖は厳冬期でも訪れる人が多いのは白鳥がこの地に留まっているからだ。この白鳥への餌付けは、NHKの「北海道中ひざくりげ ようこそ白鳥 オホーツクの湖へ −網走・涛沸湖ー」によると、漁業に従事しながら冬は北浜公園で売店をしてみえる日下部正幸さんが小学校生のころに餓死しかかった白鳥を救うために仲間とともに地区の家を回って集めた茶がらを与えたことから始まったそうだ。その後北浜小学校の子どもたちが世話をし続けている。

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