子どものスポーツ障害
1.お母さんは最高のホームドクター
自分では違和感や痛み、腫れなどに気づかない。気づいてもスポーツ障害の知識がなければ、平気だと考える。
監督やコーチに叱られたり、試合に出られなくなることを恐れ、故障を隠しているケースも少なくありません。そこで、お母さんの注意深く、愛情ある『まなざし』が大切である。
子どもにとって最高のスポーツドクターはお母さんです。
生活の中で注意したいポイント
・ 親のほうが熱くなりすぎないこと。
・ スポーツ障害の診断をくだしたとき、子どもより親は不満や不安そうな顔をしない。
・ 気づいてほしい障害サイン
気をつけたい場面 |
こんなサインがあったら要注意 |
障害のおきている可能性のある場所 |
日常生活 |
起きかけの歩行で痛がる |
足・脚 |
しゃがむのがつらそう |
ひざ |
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食事のとき食器の持ち方がぎこちない |
肩やひじ |
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歩き方がおかしい |
足・脚やひざ |
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あぐらをかくのがつらそう |
腰やひざ |
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学校生活 |
階段の下りがきつそう |
ひざ |
体育座りができない |
腰 |
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授業中じっと座っているのがつらそう |
腰 |
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スポーツ活動 |
運動の後に痛みがでる |
スポーツ障害の初期 |
走り方や動きが不自然 |
腰・ひざ・足・脚 |
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スパイクや靴を履くと痛がる |
足 |
2.野球ひじ(ひじの違和感、痛み、曲がりにくい)
ボールをたくさん投げすぎたり、無理な投げ方をしたために起こるひじの障害です。
症状は、 ひじの内側や外側の痛みです。
チェック:ひじを曲げて、指先で肩がさわれない。ひじが完全に伸びない。ひじの内側や外側を押すと痛い
@ 投げたあとに、なんとなく違和感や痛みがある。
A 投球の際にも痛みを感じる
B 痛みをがまんして無理に投げると激痛でひじがうごかなくなる。
このように3段階で野球ひじは悪化する。初期の段階なら数週間のノースローで治ります。
しかし、軟骨がくずれてしまうと、何ヶ月も完治するのに待たなければならない。
◎ 外側の痛み(治りにくい)
投球時に骨と骨がぶつかり、成長軟骨に対し、かなづちを打ちつけるようなストレスが加わって離断性 骨軟骨炎→軟骨がくずれ小さな骨のかたまり(ネズミ)が関節内を動き骨と骨の間にひっかかり激痛となる。
◎ 内側の痛み(2〜3週間のノースロー)
投球動作で引っ張る力が強くはたらく内側では、靭帯に引っ張られて骨の一部がはがれる。
*野球肩(使いすぎによる肩の痛み)
チェック:腕を伸ばしたまま横に上げていき、水平になるところで引っかかったり、痛みがある。
3.スポーツ障害の予防・治療
スポーツ障害のほとんどは、オーバーユース(使いすぎによる疲労の蓄積)や誤った練習方法、また正しくないフォームとか動作が原因となって起こる。したがって、成長期のスポーツ障害予防の基本は次の6つです。
@ 練習前は充分なウォーミングアップをする。
A 練習は週3〜4日以内におさえる。
B 正しいフォームと基本動作を身につける。
C 無理のない正しい筋力トレーニングをする。
D 同じ動作ばかりを繰り返さない。
E 練習後はクーリングダウンをおこなう。特に試合や練習でいじめた場所はアイシングする。
ひとつひとつはとても簡単ですが、面倒くさがる子も多いので、上手に指導して習慣づける。
起きてしまった障害は、専門医の診察を受け治療する。治療の基本は次の3つです。
@ 痛みのでる動作はしない。
A 患部以外のトレーニングはつづけてよい。
B ひどい場合には湿布や軟膏で痛み・炎症をおさえる
4.ウォーミングアップ
体温(筋温)を高めるためにおこなう準備運動です。心拍数を上げて筋肉中の血液量を増やし、スムーズに運動に入れる態勢をつくる。
@ 軽いランニング
A ストレッチング
5.クーリングダウン
スポーツ中全身の筋肉に充分な酸素を送ろうと心臓が激しく動き、太くなった血管の中状態を元の状態に戻すこと。また、疲労物質を除去する必要もある。
@ 除々に運動をやめる。
A ストレッチングをする。(ウォーミングアップの半分ぐらいの軽さで充分)
B オーバーユースぎみならアイシングする。
C 燃料補給も大切(スポーツドリンク・おにぎり・バナナ等簡単のもの)
* アイシング:氷を入れたビニール袋を直接あてる。
(タオル、ハンカチを巻いてもかまわない)
@ヒャッとする。Aポット温かくなる。Bヒリヒリする。C感覚がなくなったところでやめる 。(合計20〜30分凍傷に注意)
6.ジュニア・スポーツ選手のための栄養学
ふだん口にする食事が血となり、肉となり、骨となって体をつくります。成長期の子どもの食 事には、さまざまな栄養素をバランスよく体内に取り入れることが大切である。(充分な睡眠も)
@ 糖質=エネルギー源 :穀物(パン、米、めん),いも類,果物,牛乳,砂糖など
A 脂質=エネルギー源 :バター,マーガリン,油,ラードなど
B たん白質=筋肉や臓器、血などの主原料 :牛乳,卵,肉類,魚肉,大豆,豆腐などの大豆製品など
C
ビタミン/ミネラル=体を動かす潤滑油 :牛乳,チーズなどの乳製品,小魚,レバー,野菜,海藻類など
体をつくる 赤:肉類、卵、魚介類、豆、豆製品、牛乳、乳製品
熱や力になる 黄:穀類、油脂類、いも類、砂糖類
体の調子を整える 緑:海草、果物、緑黄色野菜、その他の野菜
筋肉:たん白質、糖質 骨:たん白質、カルシウム、ビタミンD(青魚、白身魚、きのこ)
腱:たん白質、ビタミンC(野菜、果物)
7.『成長痛』と『スポーツ障害』の痛みの違い
成長痛は、3〜7才くらいの男の子に多く、小学生、中学生でもでることがあります。たいてい夕方から夜にかけて痛みだし、昼間は元気に遊んでいた子が急に痛みを訴えたりします。その痛みだけが症状で腫れなどは見られません。成長痛の原因は、骨と筋肉の成長の差から筋肉が引っぱられて痛みを起こすと言われてますが、明らかになっておらず、「原因不明」が正しい答えです。痛みのほうも、1〜3日で消えてしまいます。しかし、ひざや足首などの痛みをすべて、「成長痛だから心配ない」と決めつけるのは危険です。4〜5日しても痛みが続くような場合や腫れをともなっているときは、専門医に診てもらってください。
救急処置マニュアル
1.打撲・ねんざ・脱臼・骨折
@ 安静:ただちにプレーを中止。無理なプレー続行は、靭帯損傷などを悪化させるおそれが
ある。
A 冷やす:アイシングで内出血や腫れを最小限にするほうが、その後の治りが早くなる。
B 圧迫:内出血や腫れを最小限にするため、弾力包帯かテーピングで圧迫する。
C 拳上:患部を心臓より高く上げておけば、腫れをおさえ早く引かせる。
2.すり傷
@すぐに水道水で土砂を洗い流す。
A洗ったら、きれいなガーゼを傷口にあてて処置をする。
B粉末式の外傷薬は、土砂やバイ菌ごと傷の表面にフタをしてしまうので注意する。
3.熱中症(命を失う危険性あり)
@体温が上昇し呼んでも応えず、意識がモーローとしていれば、熱中症の可能性が高くなり
ます。
その場合は、救急車を呼ぶ
*わきの下、太ももの付け根など、皮膚に近いところを走っている大きい血管を氷や冷水
で冷やす。
A熱疲労や熱けいれんは、体の中の水分や塩分が失われて起こる症状です。
涼しい場所に寝かせて、ベルト・靴下・ボタン等をゆるめて
失われた水分や塩分を補給します。(吸収の早いスポーツドリンクが最適)
B容態を見た上で、専門医につれていく。
『子どものスポーツ障害』 著:佐田正二郎 現代書林より
個性を引だすスポーツトレーニング
1.体力をつける
日本は、技術・戦術の練習が多い。しかし、アメリカは、体力をベースに技術・戦術がある。
2.コンデショニングとは?
スポーツ選手がその競技を行うにあたって、最高の能力が発揮できるように心身の状態を
教育・強化・調整すること。 今回は、教育についての話
・心の入らないトレーニングは、効果が1/10になる。(無理やりはだめ、自ら進んでする)
・トレーニングの意味を理解する。(させる)
3.心技体+眼
目からの情報が重要であり、特に動体視力が必要かつ強化すべきである。
・ボールを打つとき、ボールを捕るとき、(TVゲームばかりでは強化できない)
4.心技体
日本人は、ここ一番に弱い。→依存心が強く(誰かがやるだろう)
ここ一番に強くするために、緊張せずリラックスしすぎない状態にする必要がある。
【何々をしてはいけない】ではなく、【何々をしよう、してみよう】に変える。
例1)高めのストレートを打てる確率が低いとき、【高めを打つな】ではなく、
【低めを狙っていけ】
例2)エラーをしない練習ではなく、もっといいプレーをする練習
プラス思考に変え、積極性を養う。(メンタルトレーニング)
5.骨の成長
・骨の成長には、カルシウム+ビタミンD+適度の刺激(運動)→ 負荷を少なく回数を多く
(成長軟骨の促進、大きな負荷は骨の剥離となる。負荷:大人10回=子供20〜30回)
・足の指を使わない(使えない)子供が多い→偏平足が多く、重心がかかとにあると動作が遅れ
る(野球は、足の親指に力がかかるので足の指でタオルをたぐる練習をする。)
6.プロ野球選手の強いところ
@ 下半身が強い
A 股関節の動きが良い
B 腹筋が強い
C 肩甲骨の運動性(動きが大きく自由)
7.その他
@ メンコ遊びをしよう!(お父さんに教えてもらう)
A
インナーマッスル(腕の回転:うちわを仰ぐ、昔の体温計を下げる、チューブトレー
ニングなど)
参照ホームページ:NIKE BASEBALL (立花 龍司)