【欧州の産業教育機関を見学して】

  イギリスのNVQ(国家職業資格)、フランスのバカロレア、ドイツのマイスター制度など、欧州各国では職業資格と結びついた専門教育がなされている。これらの職業資格を取得すると、労使間で結ばれた労働協定により、一定水準の賃金保証が行われている。  しかし、日本の専門高校においては、専門教科は専門性を具体化したカリキュラムとなっているが、それが職業と完全に一致していないのが現状であり、必ずしも専門や取得した各種の資格を活かせる企業には就職していない。資格はいくつ持っていても無駄にはならないし、何時か役に立つこともあるだろうけれど、やはり、すぐに資格が活かせる場を与えてやりたいと思う。 日本社会は、卒業した学校で個人が評価される傾向にある、旧態依然とした学歴社会である。フランスの学歴は、一部エリート校志向はあるが、○○大学出身ではなく、バカロレア(高等学校卒業と大学入学資格)を取ってから何年の学業をしたかで評価される。(例えば2年の学業の場合Bac+2、4年の学業の場合はBac+4と表していく。)このように、欧州各国は卒業制度より資格制度の社会になっている。
「キャリア開発」や生涯学習の観点から、学校で学んだ専門的な知識、技術を活かし、生涯にわたって活躍できるための基礎、基本を身につけさせるために、どの学校を卒業したかという「学歴」よりも、学校で何を学んで、それをどう活かしてきたかという「学習歴」、「経験歴」を評価する流れになりつつある。座学とそれを基礎とした実習を通して、「学習歴」、「経験歴」が実践できるのが専門高校の魅力であると思う。
 今回欧州の職業教育機関を実際に見学してみて、よりよい教育をするため、主体的・献身的に努力している校長、教員の方々の姿に特に感銘を受けました。 
 また、フランスではバカロレアがある中で職業教育にも重点が置かれ、職業資格制度の整備と個性化教育が推進され、各学校の目標が明確に位置づけられていることや、職業高校は技術者を養成するための学校であり、生徒もそれを期待して入学している現状もよく理解することができました。
 学校の個性化や職業資格制度の整備は、日本の職業教育に携わる一人として大変参考になりました。この視察研修で得た知識を、今後の教育活動に活かしていきたいと思います。  7日間という短い期間でのイギリス・フランス産業教育視察でしたが、大変有意義な研修を行うことができました。
 このような貴重な機会を与えてくださいました産業教育振興中央会はじめ、お世話になりました関係者の皆様に、心から感謝申し上げます。

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