アレルギー性鼻炎(花粉症)の話

            

 原因 

花粉症は鼻の粘膜の病気です。
鼻の粘膜が
慢性的に傷んでいる
のが根本的な原因です。・アレルギーがあっても鼻の粘膜が正常なら、鼻炎になりません。正常な粘膜なら花粉,ハウスダストなどのアレルギー刺激に負けないからです。

具体的に説明しましょう。
日本人では、なんと
3040%もの人が杉・ヒノキに対する抗体を持っています。しかし、杉・ヒノキの季節がきて、花粉症の症状(くしゃみ、鼻水,鼻づまり)で困るのは、この内の約半分の人々だけです。
残りの半分は、花粉症を発症しません。

なぜでしょう。
鼻の粘膜が正常だから、刺激物質(杉・ヒノキ花粉)がきても、はねかえしてしまうからです。

鼻粘膜に異常のある人は、
容易に刺激物質(杉・ヒノキ花粉)が粘膜を通過して杉・ヒノキに対する抗体と結合し、抗原抗体反応をおこします。

これがきっかけとなって、粘膜を
更に傷める物質が続々と産生され、粘膜は一層傷み→(悪循環)→傷んだ粘膜は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりをもたらします。

又、こうも言えます。鼻粘膜に異常のある人は、粘膜がピリピリと敏感になっています。ここに、杉・ヒノキ花粉のような強い刺激物質(抗原)が襲ってくると、その刺激性や体内に持っている杉・ヒノキ抗体との反応(抗原・抗体反応)によって、粘膜は一層傷み、くしゃみ、鼻水、鼻づまりがでる訳です。

家ダニ抗原に対する抗体を持っている人では
一年中鼻が刺激を受けていて鼻粘膜は傷み続けているわけです。(通年性鼻炎)
                   

     

治療

鼻炎の一番良い治療法は、慢性的に傷んでいる鼻の粘膜を正常に戻すことです。この目的に一番かなった薬をプロピオン酸フルチカゾン(正式名)といいます。毎日必ず1日2回点鼻します。

この点鼻薬は、粘膜の荒れを速やかに修復する作用を持っていて、使い始めると早い人では3〜4日目から花粉症の症状がうんと軽快します。しかし、症状が軽くなったからといって、毎日の1日2回点鼻をやめてはいけません

粘膜の異常は慢性的なものですから、症状がなくなっても毎日規則正しく点鼻療法を続けることが大切なのです。

よくなったと思って中途で点鼻をやめると、本来あった粘膜の異常が抗原刺激(花粉、家ダニ抗原など)にさらされて、又、よみがえってきて必ず再発します。
抗原刺激にさらされても本来あった粘膜の異常が
よみがえらないまで点鼻療法を続ける必要があります。

粘膜の病気は、一朝一夕には治りません。
では、どれくらいの期間、点鼻療法を続けたらいいでしょう。

粘膜の傷み具合、程度、点鼻薬に対する反応性によって
一人一人皆、異なります
主治医が、その期間を検査の結果から一人一人個別に教えてくれるでしょう。


副作用について

『症状がないのに点鼻を続けても、副作用は出ないだろうか』と心配する人もいるでしょう。
その心配はいりません。
むしろ、長めに続けるほうがよい結果が出ています。
『この点鼻薬は、ステロイドだと聞きました。ステロイドの長期使用は副作用が心配です。』という質問もありました。この点についても心配いりません。

   

局所ステロイドについて

なぜならこれは、局所専用ステロイドで、従来の全身用テロイドとは根本的に異なるからです。
局所専用ステロイドですから、全身の副作用はほとんど全くといっていいほどありません。このことは、たくさんの研究から確実に証明されています。

アレルギー性鼻炎には、現在は経口薬が多用されています。
これらは、「抗ヒスタミン薬」といって抗原抗体反応を一時的におさえる
だけで、鼻の粘膜を修復する作用は、全くありません。
つまり、症状をおさえるだけです(これを対症療法と言います。熱が出た時に“熱さまし”を飲むのと同じです)
だから薬が切れると元の症状がすぐにぶりかえします。

毎年、経口薬(抗ヒスタミン薬)を内服して症状をしのいでいる人は、毎年毎年同じことの繰り返しをしているだけになります。
しかも、経口薬には、眠気、口の渇きなど副作用が強くあります。
点鼻療法を続けている人の場合、年々鼻粘膜が正常に近づきます。
こちらの方が私は、正しい治療法だと信じています。(根治性が強い治療法)

だから当院では経口薬を一切使わず、安全な、根治性の強い点鼻療法を続けることを強くお勧めしているのです