4月30日(金曜)

    船上から見える沖縄の夜景

 AM10:00に宿を出る。この四畳半の部屋とも永遠にお別れ。テレビ・バス・トイレ・
冷蔵庫付きで3150円(税込み)は安い。そして、快適だった。お隣の人は仕事で30
日まで沖縄にいるそうだ。仕事だってさ。もう忘れたよ。

 とにかく、居心地の良い宿を発ち銀行へと向かう。その前に郵便局によりお金を50
万円引き出し、ついでに切手も買った。第一勧業銀行で米ドルのトラベラーズチェックを
1600ドル分買う。レートは120円/ドルだ。台湾ドルは、沖縄では両替え出来ない
らしい。沖縄の観光地なんて台湾人だらけなのに、なんでできないんだ...。明日は土曜日
だけど台湾では銀行は開いていて両替えは可能なのだろうか。ちょっとした不安が頭をよ
ぎる。本屋で小説数冊、薬屋で目薬、お土産やで絵葉書を買い込み。昼食はステーキハウ
スでとる。沖縄は肉が安い。これは諸手をあげて歓迎できる文化やね。まあ、松阪牛程う
まくはないが。

 PM5:30沖縄新港へと向かう。船の乗船準備が整うまでの間に中万と竹井、そして安
田さん宛に絵葉書を書き港のポストに放り込んだ。やがて僕らが乗り込む「飛竜21」へ
僕らを運んでくれる小さなミニバスがやってきた。石垣島経由のせいか日本人の若者もち
らほら見える。しゃべらないと区別はつかないが、台湾のおじさん、おばさんもいるよう
だ。行き先順に船に乗り込む。台湾行きの僕は最後の方だった気がする。船内に着くと出
国審査が始まった。台湾行きの人は思いのほか少なく10人程だった。パスポートに「出
国・NAHA」のスタンプが押される。僕は、初めて一人で日本を出国した。自分では引っ込
み思案で、あまり思い切りのよくない性格だと思っていた。まあ、そんな僕だが理由は何
にせよ会社を辞めて、一人でバックパッカーのまねごとをする。なんだか、自分がとんで
もない事をしている気になってきた。この旅立ちの夜の興奮は多分いつまでも僕の記憶に
のこるやろ。免税店が開かれたので、とりあえずマルボロを1カートン買う。その後、船
室へと向かう。一番安い「ツーリスト」クラスの船室の中はまさに台湾だった..。どうゆ
うことかというと1部屋に12あるベッドの内半数以上が台湾の人で占められていた。室
内には聞いて意味の分からぬ中国語らしきものがあふれている。台湾のおばちゃん、おじ
ちゃんはとにかく良く喋る。まだ日本にいるつもりだった僕は、心の準備も出来ぬまま外
国へと放り込まれた気になり、なんとも心細く尻の座りの悪い船室を抜け出しデッキでビ
ールを飲むことにした。漆黒の空に星が瞬く。大学時代の船旅を思い出した。数人の旅行
者が僕と同じようにデッキに寝そべり、本を読んだり話をしたりと、皆思い思い方法で旅
を楽しんでいる。始まってまだ数日しか経っていないのに僕はなんだか寂しくなり、缶の
キリンビールを四本ほど飲み酔っぱらったところで床に着いた。